七情とは

七情(しちじょう) とは、東洋医学において病気の原因とされる「内因」のひとつで、人間の感情活動が過度になり、心身に影響を及ぼすものを指します。
正常な範囲での感情は自然な反応ですが、極端であったり持続しすぎると臓腑や気血の働きを乱し、病気の原因となります。


七情の種類と影響

  • 喜(よろこび): 過度になると心を損ない、動悸・不眠・気の緩みを引き起こす。
  • 怒(いかり): 肝を損ね、気が上昇しやすくなる。頭痛・めまい・顔の紅潮を伴う。
  • 憂(うれい): 肺を損ね、気の流れを停滞させる。息切れ・咳・倦怠感を招く。
  • 思(おもい): 過度な思慮が脾を損ね、気の巡りを阻害。食欲不振・胃の不快感・疲労を引き起こす。
  • 悲(かなしみ): 肺を損ね、気が消耗。息苦しさ・ため息・虚脱感を伴う。
  • 恐(おそれ): 腎を損ね、気が下に落ちやすい。小便失禁・腰や膝の弱さが出やすい。
  • 驚(おどろき): 心を乱し、気が散乱。動悸・不眠・不安定な精神状態を生じる。

七情と臓腑の関係

七情はそれぞれ特定の臓腑に影響を及ぼすと考えられています。
「喜は心に属し、怒は肝に、憂と悲は肺に、思は脾に、恐と驚は腎に影響する」とされ、
感情と臓腑の働きが密接に結びついているのが特徴です。


七情による病理

感情の過度な偏りは、気の流れ(気機)を乱すことに直結します。
例えば、怒りによる「肝気上逆」、思慮過多による「脾気滞結」、
悲しみすぎによる「肺気消散」などが典型です。
これらは内傷七情(内因性の病因)として、慢性疾患や心身症の背景に深く関わります。


治療と養生

七情による不調を治すには、
鍼灸や漢方によって臓腑の働きを整えると同時に、
感情を適切にコントロールする養生が重要です。
呼吸法・気功・瞑想なども有効とされます。


まとめ

七情とは、人間の感情の過不足が体に影響を与えるとする東洋医学の病因論です。
喜・怒・憂・思・悲・恐・驚の七つの感情が、それぞれ臓腑の働きと結びついています。
心と体の調和を保つことが、健康維持の大切な要素といえるでしょう。

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