はじめに
気・血・水・精の失調は、多くの場合「結果」として語られます。
- 気虚
- 血虚
- 痰湿
- 精不足
しかし東洋医学では、それらは突然起こるものではなく、必ず“始まりの臓”があります。
本記事では、細かな証の分類に入る前に、
- 失調はどこから始まりやすいのか
- なぜ全身の問題に見えるのか
を、五臓全体の構造として整理します。
まず結論:多くは「脾」から始まる
気・血・水・精の失調は、最初のつまずきが脾にあることが非常に多いです。
理由は単純で、
- 気・血・水は脾で生まれ
- 精も脾によって補われる
からです。
⇒ 「作れない」状態は、どの要素の失調にも直結します。
脾から始まる失調の広がり方
① 気の失調
- 運化低下 → 気が不足
- 推動力が弱まり、巡らない
結果として、
- 疲れやすい
- 張りやすい
- 内臓下垂感
などが現れます。
② 血の失調
- 気が足りない → 血を生めない
- 脾の統血が弱まる
結果として、
- 血虚
- 出血傾向
- 皮下出血
が起こりやすくなります。
③ 水(津液)の失調
- 運化されない水分が滞る
- 巡る前に溜まる
結果として、
- 痰湿
- 浮腫
- 重だるさ
が生じます。
④ 精への影響
- 後天の補充が弱まる
- 腎精の消耗が進む
⇒ 脾虚は、時間をかけて腎精不足へとつながります。
次に関わってくる臓:肝
脾で生じた「不足」や「滞り」は、次に肝の疏泄へ影響します。
- 気が流れにくい
- 血の配分が乱れる
ここで、
- 気滞
- 血瘀
といった「動かない失調」に変わります。
⇒ 肝が関わると、症状は固定化しやすくなります。
全身化の要:心
肝で滞ったものが、次に影響するのが心です。
- 血脈の巡りが不均一になる
- 神志が乱れる
これにより、
- 睡眠障害
- 不安・焦燥
- 自律神経様症状
が前面に出てきます。
⇒ 心が関わると、失調は「全身症状」として自覚されます。
長期化の段階:腎
脾・肝・心の乱れが続くと、最後に影響を受けるのが腎です。
- 回復を支え続ける
- 無理な補償が続く
結果として、
- 精不足
- 老化様症状
- 慢性疲労
へと移行します。
⇒ 腎が関わると、失調は体質として固定します。
例外はあるが、構造は同じ
もちろん、
- 先天的に腎が弱い
- 強い情志刺激で肝から始まる
- 外感病で肺から始まる
ケースもあります。
しかし多くの場合でも、最終的には
- 脾の生成
- 肝の流れ
- 心の統合
- 腎の持続
という構造の中で病態が進みます。
まとめ
気・血・水・精の失調は、
- 単独では起こらず
- 必ず臓の連鎖として進行します。
多くの場合、始まりは脾であり、
- 肝が固定化し
- 心が全身化し
- 腎が体質化する
という流れを取ります。
全体像をつかむことで、細かな証に振り回されず、「今どの段階にいるのか」を見極めやすくなります。
それが、東洋医学を実践的に使うための大きな助けになります。