東洋医学 弁証フローチャート(症例付き)

① まず虚実を判断

  • 実証:痛みが強い・拒按・急性・体力あり
  • 虚証:慢性・疲れやすい・倦怠感・喜按

② 病機を判断


症例と弁証

症例1 ストレスによる頭痛

30歳女性。仕事のストレスが多く、こめかみの張る頭痛。 イライラしやすく、胸脇部が張る感じ。



症例2 めまいと高血圧傾向

50歳男性。怒りっぽく、顔が赤い。 めまいと頭痛を訴える。



症例3 慢性的な疲労と食欲不振

40歳女性。疲れやすく食欲がない。 下痢気味で胃腸が弱い。



症例4 不眠と動悸

35歳女性。寝付きが悪く夢が多い。 動悸や不安感がある。



症例5 慢性腰痛と冷え

60歳男性。腰がだるく冷える。 頻尿があり、足が冷たい。



症例6 慢性肩こりと刺す痛み

45歳女性。肩の刺すような痛み。 夜に痛みが強くなる。



症例7 咳と痰が多い

50歳男性。痰が多く胸が重い。 食後に症状が悪化。



症例8 寝汗とほてり

40歳女性。夜に汗をかく。 口渇とほてりがある。

弁証→治法→方剤→鍼灸 統合表

弁証(病機) 治法 代表方剤 代表経穴
肝気鬱結 疏肝理気 逍遥散・柴胡疏肝散 太衝期門肝兪
肝火上炎 清肝瀉火 竜胆瀉肝湯 太衝行間大敦
肝陽上亢 平肝潜陽 天麻鈎藤飲 太衝風池百会
心血虚 養血安神 帰脾湯酸棗仁湯 神門心兪三陰交
心火亢盛 清心瀉火 黄連解毒湯 神門少府心兪
痰火擾心 清熱化痰安神 温胆湯 豊隆神門内関
脾気虚 健脾益気 四君子湯 足三里脾兪中脘
脾陽虚 温中健脾 理中丸 足三里脾兪関元
湿困脾 燥湿健脾 平胃散 陰陵泉足三里中脘
肺気虚 補肺益気 補中益気湯 太淵肺兪足三里
肺陰虚 滋陰潤肺 麦門冬湯 太淵照海肺兪
痰湿阻肺 燥湿化痰 二陳湯 豊隆中脘肺兪
腎陽虚 温補腎陽 八味地黄丸 腎兪命門関元
腎陰虚 滋陰補腎 六味地黄丸 太渓腎兪三陰交
腎不納気 補腎納気参蛤散 腎兪太渓気海
血瘀 活血化瘀 桂枝茯苓丸・血府逐瘀湯 血海膈兪三陰交
気滞 行気解鬱 柴胡疏肝散 太衝内関期門
気虚 補気益気 四君子湯補中益気湯 足三里気海脾兪
陰虚火旺 滋陰降火 知柏地黄丸 太渓三陰交照海
湿熱 清熱利湿 茵蔯蒿湯竜胆瀉肝湯 陰陵泉太衝曲池
寒邪 温散寒邪麻黄湯 風門肺兪合谷
風邪疏風解表桂枝湯 風池合谷外関

病機→治法 対応表

病機 主な治法 治法の方向性
気虚 補気益気 気を補い臓腑機能を高める
気滞 理気行気 気の流れを調える
気逆 降気降逆 上逆した気を下げる
気陥 補中益気昇提 下陥した気を持ち上げる
血虚 補血養血 血を補い栄養作用を回復
血瘀 活血化瘀 瘀血を除き血行改善
血熱 清熱涼血 血分の熱を冷ます
陰虚 滋陰養陰 陰液を補い潤す
陽虚 温補温陽 陽気を補い温める
津液不足 養陰生津 体液を補う
痰湿 燥湿化痰 湿を除き痰を除去
痰熱 清熱化痰 熱を冷まし痰を除く
寒邪 温散寒邪 寒を散らす
風邪 疏風解表 風邪を発散
湿邪 祛湿利湿 湿を除去
湿熱 清熱利湿 熱と湿を同時に除く
肝気鬱結 疏肝理気 肝の疏泄を回復
肝火上炎 清肝瀉火 肝火を瀉す
肝陽上亢 平肝潜陽 陽気を鎮める
肝血虚 養血柔肝 肝血を補う
心血虚 養血安神 血を補い精神を安定
心火亢盛 清心瀉火 心火を清す
痰迷心竅 化痰開竅 痰を除き意識を回復
脾気虚健脾益気 脾の運化を高める
脾陽虚 温中健脾 脾を温める
湿困脾 燥湿健脾 湿を除き脾を助ける
肺気虚 補肺益気 肺気を補う
肺陰虚 滋陰潤肺 肺陰を補う
痰阻肺 化痰宣肺 痰を除き肺気を通す
腎陽虚 温補腎陽 腎陽を補う
腎陰虚 滋陰補腎 腎陰を補う
腎不納気 補腎納気 腎の納気作用を回復
心脾両虚 補気養血健脾養心 脾と心を同時に補う
肝脾不和 疏肝健脾 肝気を整え脾を補う
肝胃不和 疏肝和胃 肝気を整え胃を調える
脾腎陽虚 温補脾腎 脾腎の陽を補う
肺腎陰虚 滋陰補肺腎 肺腎陰を補う

滋陰補肺腎とは

滋陰補肺腎(じいんほはいじん)とは、肺と腎の陰液を補い潤すことで、陰虚による乾燥症状や慢性呼吸症状を改善する治法を指します。
主に肺腎陰虚の病態に用いられます。

主な適応病態
・慢性咳嗽(乾咳)
・痰少・粘痰
・咽喉乾燥
・午後の微熱
・盗汗
・腰膝酸軟
・舌紅少苔・脈細数

病機のポイント
久咳・慢性疾患・加齢など

肺陰耗傷

腎陰不足

肺腎陰虚

虚熱内生・肺失滋潤

治法の特徴
滋陰補肺腎は、
・肺陰を養う(滋肺陰)
・腎陰を補う(補腎陰)
・虚熱を鎮める
という滋陰+補肺腎」を主眼とする治法です。
特に慢性乾咳や虚熱症状に適します。

代表的な治法の組み合わせ
・虚熱顕著 → 滋陰清熱
・乾燥症状強い → 滋陰潤燥
・咳嗽顕著 → 潤肺止咳
・腎虚顕著 → 滋陰補腎

代表的な方剤例
・百合固金湯
・麦味地黄丸
・六味地黄丸
・養陰清肺湯

補足ポイント
肺と腎は「金水相生」の関係にあり、肺陰と腎陰は相互に影響します。
滋陰補肺腎は、特に久咳・咽乾・盗汗・腰膝酸軟を伴う肺腎陰虚に用いる補陰治法です。

化痰宣肺とは

化痰宣肺(けたんせんぱい)とは、肺に停滞したを分解して除去すると同時に、肺の宣発機能を回復させることで咳嗽や呼吸症状を改善する治法を指します。
主に痰阻肺気による咳嗽・喘息などに用いられます。

主な適応病態
・咳嗽
・痰多(白色または粘稠)
・胸悶・胸部圧迫感
・喘息・呼吸困難
・咽喉の痰詰まり感
・舌苔白膩または黄膩・脈滑

病機のポイント
外邪侵襲・脾失健運など

湿聚為痰

痰阻肺絡

肺失宣発粛降

咳嗽・痰多出現

治法の特徴
化痰宣肺は、
・痰を分解・排出する(化痰)
・肺の宣発機能を回復する(宣肺)
・呼吸機能を整える
という「除痰+宣肺」を主眼とする治法です。
特に痰が多く胸がつかえる咳嗽に適します。

代表的な治法の組み合わせ
・寒痰 → 温化寒痰宣肺
・痰熱 → 清熱化痰宣肺
・外感風寒 → 宣肺散寒化痰
・脾虚痰湿 → 健脾化痰宣肺

代表的な方剤例
・二陳湯
・三子養親湯
・清気化痰丸
・小青竜湯(寒痰例)

補足ポイント
肺は「宣発粛降」を主る臓であり、痰が停滞するとその機能が阻害されます。
化痰宣肺は、特に痰多・胸悶・滑脈を目安に用いる代表的化痰治法です。

温散寒邪とは

温散寒邪(おんさんかんじゃ)とは、体内または体表に侵入した寒邪を温めて発散し、寒による気血の停滞や機能低下を改善する治法を指します。
主に外寒侵襲や寒邪内停による症状に用いられます。

主な適応病態
・悪寒・寒がり
・発熱軽微または無熱
・頭痛・身体痛
・鼻水(清涕)
・腹痛(温めると軽減)
・舌淡・苔白・脈浮緊または沈遅

病機のポイント
外寒侵襲または寒邪内生

陽気抑制

気血運行不暢

寒凝気滞

疼痛・機能低下出現

治法の特徴
温散寒邪は、
・体を温める(温)
・寒邪を発散する(散寒)
・気血の流れを回復する
という温陽散寒を主眼とする治法です。
特に寒による疼痛や外感寒証に適します。

代表的な治法の組み合わせ
・外感風寒 → 辛温解表
・寒湿併存 → 温散寒湿
・寒凝血滞 → 温経散寒活血
・陽虚体質 → 温補陽気

代表的な方剤例
・麻黄湯
・桂枝湯
・当帰四逆湯
・理中湯(内寒例)

補足ポイント
寒邪は「凝滞・収引」の性質を持ち、気血の流れを阻害します。
温散寒邪は、特に悪寒・冷痛・白苔を目安に用いる基本的散寒治法です。

斂肺とは

斂肺(れんぱい)とは、肺気の漏出を収斂させることで咳嗽や呼吸機能の失調を改善し、肺の粛降・宣発機能を安定させる治法を指します。
主に肺気虚肺陰虚による久咳に用いられます。

主な適応病態
・長引く咳嗽(久咳)
・息切れ
・声のかすれ
・自汗または盗汗
・少量の粘痰または乾咳
・舌淡または舌紅少苔・脈細弱

病機のポイント
久病・慢性咳嗽など

肺気または肺陰不足

肺の粛降機能低下

肺気外泄

咳嗽持続

治法の特徴
斂肺は、
・肺気の漏出を収める(収斂)
・咳嗽を鎮める
・肺の機能を安定させる
という「収斂止咳」を主眼とする治法です。
急性外感よりも慢性の虚証咳嗽に適します。

代表的な治法の組み合わせ
・肺気虚 → 益気斂肺
・肺陰虚 → 滋陰斂肺
・久咳傷肺 → 補肺止咳
・腎虚併存 → 補腎納気

代表的な方剤例
・九仙散
・人参蛤蚧散
・生脈散
・麦門冬湯(陰虚例)

補足ポイント
肺は「嬌臓」であり、慢性咳嗽により機能が弱りやすい臓腑です。
斂肺は、特に久咳・息切れ・自汗を伴う虚証咳嗽に用いる収斂治法です。