性状脈の意義
性状脈は、脈の触感・形態・動きの特徴から、病機の質的内容を読み取るための診断要素である。
浮沈・遅数によって病位と寒熱を定め、虚実・脈力によって正邪関係を把握した後、性状脈を診ることで、痰・瘀・気滞・寒邪などの具体的病理産物が明確になる。
主要な性状脈
① 弦脈琴の弦を触れるように、張りが強く、直線的に感じる脈。
- 主な示唆:気滞、肝失疏泄
- 関連病機:肝気鬱結、肝陽上亢、疼痛
- 関連治法:疏肝理気、平肝潜陽
② 滑脈
玉が転がるように、なめらかで連続的に触れる脈。
- 主な示唆:痰湿、食積、実熱
- 関連病機:痰湿内停、胃腸実熱
- 関連治法:化痰、清熱、消導
③ 渋脈
流れが滞り、引っかかるように不整に感じる脈。
- 主な示唆:瘀血、血虚
- 関連病機:血行不良、久病入絡
- 関連治法:活血化瘀、養血
④ 緊脈
縄を引き伸ばしたように、張って硬い感触の脈。
- 主な示唆:寒邪、疼痛
- 関連病機:寒邪内盛、寒凝気滞
- 関連治法:温経散寒、止痛
⑤ 細脈
細く、弱々しいが連続性は保たれる脈。
- 主な示唆:気血不足、陰虚
- 関連病機:血虚、陰液不足
- 関連治法:補血、滋陰
⑥ 洪脈
大きく力強く、来勢が盛んで去勢が急な脈。
- 主な示唆:実熱、陽盛
- 関連病機:気分・営分の熱
- 関連治法:清熱瀉火
性状脈の組み合わせ読み
性状脈は単独で判断するのではなく、浮沈・遅数・虚実との組み合わせで読むことが重要である。
- 弦+数:肝火、肝陽上亢
- 滑+数:痰熱、実熱
- 渋+遅:寒凝血瘀
- 弦+細:肝血虚、肝腎陰虚
舌診との照合
性状脈は、舌質・舌苔と照合することで病機が確定的になる。
例えば、滑脈+厚膩苔であれば痰湿、弦脈+舌辺紅であれば肝気鬱結が示唆される。
臨床での注意点
性状脈は主観的要素が入りやすいため、複数の特徴が混在する場合は主要所見を優先する。
また、体質的に弦脈傾向を示す人もいるため、症状・舌所見との整合性を必ず確認する。
病機・治法への接続
性状脈は、病機を最終的に具体化し、治法選択を確定する段階である。
これまでの脈診各論と統合することで、舌脈から一貫した臨床判断が可能となる。
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