東洋医学における診察は、舌診・脈診・腹診という三つの身体所見を統合して行われる。
それぞれは独立した診断法ではあるが、本来は互いを補完し合い、一つの病機像を立体的に描くための要素である。
① 三診それぞれの役割整理
- 舌診:体内環境の「状態」を映す(気血津液・寒熱・虚実のベース)
- 脈診:気血の「動き」を捉える(反応性・勢い・病位)
- 腹診:病邪の「現在地」と正邪の力関係を触知する
三診は、静的(舌)―動的(脈)―局所的(腹)という異なる次元の情報を提供する。
② なぜ三診を統合するのか
単一の診察法に依存すると、病機の一側面だけを過大評価してしまう危険がある。
- 舌だけを見ると「体質判断」に偏りやすい
- 脈だけを見ると「一過性の反応」に振り回されやすい
- 腹だけを見ると「局所決め打ち」になりやすい
三診を統合することで、全体像・動態・現場が揃い、診断の精度と再現性が高まる。
③ 三診統合の基本手順
- 舌診で体内環境のベースを把握する
- 脈診で現在の反応性・病位を確認する
- 腹診で病邪の位置と性質を確定する
この順序で診ることで、腹診の所見を過信しすぎることを防ぎ、 同時に治療判断を明確にできる。
④ 三診が一致する場合・ズレる場合
三診が一致する場合
- 舌・脈・腹が同じ寒熱・虚実を示す
- 病機判断の確度が高い
- 治療反応も出やすい
三診がズレる場合
- 舌は虚、腹は実 → 本虚標実
- 舌は熱、腹は冷 → 寒熱錯雑
- 脈のみ実 → 一過性反応・緊張
ズレは誤りではなく、病機が多層的であることのサインとして読む。
⑤ 三診から治療へ落とす思考
統合した三診情報は、以下のように治療判断へ変換される。
- 舌:補瀉・寒熱の強度調整
- 脈:治療のタイミング・刺激量
- 腹:治法・処方系統の決定
この役割分担により、なぜその治療を選んだのかを説明できる診療が可能となる。
⑥ 経過観察における三診統合
治療経過では、三診が必ずしも同時に変化するとは限らない。
- 腹が先に変わる
- 次に脈が落ち着く
- 最後に舌が整う
この順序を理解していれば、一時的な変化に過剰反応せず、治療を継続できる。
⑦ 総まとめ
三診とは、別々の診察法を足し算するものではなく、 一つの病機像を立体的に描くための統合的思考法である。
舌で全体を見、脈で流れを感じ、腹で現場を確かめる。
この三層構造を意識することで、東洋医学の診断は経験則から再現性のある臨床判断へと深化する。
0 件のコメント:
コメントを投稿