五志(ごし)とは、東洋医学において五臓それぞれに対応する基本的な感情活動を指し、怒・喜・思・憂・恐の5つをいいます。
これらは単なる「感情の種類」ではなく、臓腑の気血の働きが精神面に現れたものと考えられています。
そのため、感情の偏りや過剰は対応する臓を損傷し、逆に臓の失調が感情異常として現れるという、心身一如の関係で理解されます。
■ 五志と五臓・五行の対応
| 五行 | 五臓 | 五志 | 感情の本質 |
|---|---|---|---|
| 木 | 肝 | 怒 | 発散・上昇・エネルギーの爆発 |
| 火 | 心 | 喜 | 興奮・開放・精神の高揚 |
| 土 | 脾 | 思 | 集中・思考・内向的活動 |
| 金 | 肺 | 憂(悲) | 収縮・沈静・気の下降 |
| 水 | 腎 | 恐(驚) | 防御・退避・生命保存反応 |
■ 五志の東洋医学的な意味
① 怒(ど) — 肝の志
怒は気を上逆・発散させる力を持つ感情です。
適度なら行動力となりますが、過剰になると肝気上逆・気滞・頭痛・めまい・イライラなどを引き起こします。
② 喜(き) — 心の志
喜は心気を緩め、精神を開放する感情です。
過度になると心神が散乱し、動悸・不眠・集中力低下が生じます。
③ 思(し) — 脾の志
思は考えを巡らせ、集中する精神活動です。
過剰になると脾を損傷し、食欲不振・疲労・気虚を招きます。
④ 憂(ゆう) — 肺の志
憂・悲は気を収斂・下降させる感情です。
過度になると肺気が弱り、呼吸浅表・気力低下・免疫低下が起こります。
⑤ 恐(きょう) — 腎の志
恐は生命防御に関わる本能的な感情です。
過度になると腎気が下陷し、失禁・腰膝無力・精力低下が見られます。
■ 五志の特徴(重要ポイント)
- 感情は臓の生理活動の表れである
- 過度の感情は臓を傷る「内因」になる
- 臓の失調は感情異常として現れる
- 五志は気の運動方向を示す
■ 五志=「気の動きの表現」
| 五志 | 気の動き |
|---|---|
| 怒 | 上昇・発散 |
| 喜 | 緩和・散乱 |
| 思 | 停滞・集中 |
| 憂 | 収斂・下降 |
| 恐 | 下陷・退避 |
■ まとめ
五志とは、五臓の気の働きが精神面に現れた基本感情であり、東洋医学では「心と体は分離できない」という思想を最も象徴する概念のひとつです。
五志を理解すると、
- 感情と臓腑の関係
- ストレスが体に与える影響
- 心身相関の診断思考
が一気に立体的に見えてくるようになります。
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