五味(酸・苦・甘・辛・鹹)とは

五味(ごみ)とは、飲食物が持つ基本的な五つの味の性質を五行に対応させたもので、単なる味覚の分類ではなく、人体に及ぼす作用・臓腑との関係・気血津液への影響を体系化した概念です。
東洋医学では、味は「舌で感じる感覚」であると同時に、体内の機能に直接働きかける“作用の性質”と考えられています。


■五味の基本概念

食物の味には、それぞれ特定の生理作用があり、臓腑と密接に結びついています。

五味は次のような特徴を持ちます。

  • 臓腑に帰経する
  • 気血津液の動きを変化させる
  • 過不足によって病を生む

つまり五味とは、「食物の味として現れた五行の作用力」を意味します。


■五味と五行の対応

五行 五臓 五味 主な作用
収斂・固渋
清熱・燥湿・降泄
補益・緩和
発散・行気
鹹(しおからい) 軟堅・瀉下


■各五味の東洋医学的な意味

①酸味 — 収める力(肝)

酸味は引き締め、外へ漏れるものを内に留める作用を持ちます。

主な働き

  • 汗や体液の漏れを防ぐ
  • 気を収斂する
  • 筋を養う

過剰時

  • 気の巡りを阻害
  • 筋の拘急

酸味は「内に引き戻す力」を象徴します。


②苦味 — 下げる力(心)

苦味は熱を冷まし、余分なものを下へ導きます。

主な働き

  • 清熱
  • 燥湿
  • 気を下降させる

過剰時

  • 乾燥を招く
  • 気を損傷

苦味は「余分を取り除く力」です。


③甘味 — 補う力(脾)

甘味は気血を補い、緊張を緩めます。

主な働き

  • 補益
  • 緩和
  • 調和

過剰時

  • 湿を生む
  • 脾の負担増加

甘味は「生命を養う力」を象徴します。


④辛味 — 動かす力(肺)

辛味は発散し、気血を巡らせます。

主な働き

  • 発汗
  • 気行促進
  • 滞りを解消

過剰時

  • 気を散らす
  • 陰液を損傷

辛味は「外へ広げる力」です。


⑤鹹味 — 柔らかくする力(腎)

鹹味は硬いものを軟らかくし、下へ導きます。

主な働き

  • 軟堅散結
  • 瀉下
  • 水分調節

過剰時

  • 腎精を損傷
  • 血圧上昇

鹹味は「生命の深部に作用する力」です。


■五味の本質的な意味

五味は単なる味覚の分類ではありません。

東洋医学では、

  • 気の動きを変える力
  • 臓腑に直接働く作用
  • 五行の運動の現れ

と捉えられます。

つまり五味とは、「自然界の五行の働きが食物の味として現れたもの」なのです。


■五行色体表における位置づけ

五味は特に次の要素と深く関係します。

  • 五臓の滋養
  • 気血津液の生成
  • 病因としての偏食

そのため、食養生では五味のバランスが極めて重要とされます。


■まとめ

五味とは、五行の作用が食物の味として現れ、臓腑や気血の働きを調整する力である。

  • 酸 → 収斂(肝)
  • 苦 → 清降(心)
  • 甘 → 補益(脾)
  • 辛 → 発散(肺)
  • 鹹 → 軟化(腎)

五味は、「味覚でありながら、生命活動を動かす力そのもの」として理解されます。

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