衛気営血弁証とは

「衛気営血弁証(えきえいけつべんしょう)」 とは、東洋医学において病邪(特に外感熱病)の進行を 衛 → 気 → 営 → 血 の4段階に分けて分析する方法です。
これは主に「温病学」の理論から発展したもので、病邪が体表から内部へと侵入し、浅い段階から深い段階へと移行する様子を説明します。


衛気営血の4段階

  • 衛分証(えいぶんしょう):邪が体表(衛気)にある段階。
    症状:発熱、悪寒、頭痛、咽喉の腫れ、脈は浮数。
  • 気分証(きぶんしょう):邪が気の段階に侵入。
    症状:高熱、口渇、大汗、便秘、脈は洪大。
  • 営分証(えいぶんしょう):邪が営血(血液と精神活動の深部)に侵入。
    症状:夜間の発熱、心煩、不眠、舌紅、脈は細数。
  • 血分証(けつぶんしょう):邪が血分にまで侵入。
    症状:出血(吐血・鼻血・下血)、発疹、神志昏迷、脈は細数または渋。

診断の流れ

発熱・脈状・舌の変化・精神症状の有無などを手がかりに、病邪がどの段階にあるかを判断します。
例えば、発熱と悪寒が並存している → 衛分証。
高熱で汗が多く便秘を伴う → 気分証。
夜間に熱が強まり不眠が目立つ → 営分証。
出血傾向や意識障害 → 血分証。


臨床的意義

  • 病邪の深さ・進行度を把握できる
  • 治療の方向性(発汗・清熱・涼営・凉血など)が明確になる
  • 八綱弁証や気血津液弁証と併用することでより精密な診断が可能になる

まとめ

「衛気営血弁証」とは、病邪の浅深と進行を4段階で分析する弁証法です。
外感熱病を中心に、邪の動向を的確に捉え、治療方針を導くうえで欠かせない理論体系といえます。

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