治則(ちそく) とは、東洋医学における治療の基本原則を指します。
病因・病性・病位・病勢を踏まえて立てられた証(しょう) に基づき、どのような方向で治療を行うかを示すものです。
いわば「治療の羅針盤」となる考え方です。
治則の基本原則
東洋医学には、いくつかの普遍的な治療原則があります。
- 扶正祛邪(ふせいきょじゃ): 正気を補い、邪気を取り除く。もっとも基本的な原則。
- 陰陽調和(いんようちょうわ): 陰と陽のバランスを整える。陰虚には滋陰、陽虚には補陽を行う。
- 調和気血津液(ちょうわきけつしんえき): 気・血・津液の運行を整え、不足すれば補い、滞れば巡らせる。
病性に応じた治則
病の性質(寒熱・虚実・陰陽)に応じて治則が立てられます。
- 寒証: 温める(温裏・温経)。
- 熱証: 冷ます(清熱・瀉火)。
- 虚証: 補う(補気・補血・補陰・補陽)。
- 実証: 瀉する(瀉下・理気・化痰など)。
病位に応じた治則
病の位置に応じても治則が変わります。
- 表証: 発汗させて邪気を追い出す(発汗解表)。
- 裏証: 瀉下・和解などで内部の邪気を除く。
- 半表半裏: 和解少陽(調和する方法)。
- 臓腑経絡: 各臓腑・経絡の失調に応じて補瀉を行う。
代表的な治則の例
- 虚を補い、実を瀉す: 基本原則。虚弱な部分は補い、余分なものは取り除く。
- 寒を温め、熱を冷ます: 病性に応じて体を温めたり冷ましたりする。
- 上を清め、下を温める: 上焦に熱があれば清熱し、下焦が冷えていれば温める。
- 標本緩急(ひょうほんかんきゅう): 急な症状(標)と根本原因(本)のどちらを先に治すかを見極める。
まとめ
治則とは、東洋医学における治療の大原則 であり、
「扶正祛邪」「陰陽調和」「気血津液の調整」などを中心に、
病因・病性・病位・病勢に応じて柔軟に適用されます。
この治則を踏まえて、実際には鍼灸・湯液(漢方薬)・気功・導引などの具体的な治療法が選ばれます。
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