東洋医学における病理のとらえ方

東洋医学では、病気を単に「症状」だけでなく、病因・発病機序・病性・病位・病勢 の5つの視点から総合的にとらえます。
これらを体系的に理解することで、弁証論治の精度が高まり、適切な治療につながります。


1. 病因(びょういん)

病因とは、病気を引き起こす原因のことです。
東洋医学では「外因・内因・不内外因」の3つに大別されます。

  • 外因: 風・寒・暑・湿・燥・火といった六気の影響。
  • 内因: 喜・怒・憂・思・悲・恐・驚の七情による心身の乱れ。
  • 不内外因: 飲食の不摂生、労倦、外傷などその他の要因。

2. 発病機序(はつびょうきじょ)

病因がどのように体に作用して病気が発生するか、そのメカニズムを説明するのが発病機序です。
「正気と邪気の盛衰」「陰陽の失調」「気血津液の変化」などが含まれます。


3. 病性(びょうせい)

病の性質を示すものです。大きくは以下の2つに分けられます。

  • 陰陽: 病が冷えや不足に傾く(陰)、または熱や亢進に傾く(陽)。
  • 寒熱: 病が寒性か熱性かを判断する。悪寒・冷え(寒)、発熱・口渇(熱)など。

4. 病位(びょうい)

病気が体のどこにあるかを示します。代表的な観点は次のとおりです。

  • 表裏: 皮膚や筋肉の表層(表)、臓腑などの深部(裏)。
  • 半表半裏: 表と裏の中間にある状態。往来寒熱など。
  • 臓腑: 五臓六腑に及ぶ病位。肝・心・脾・肺・腎など。
  • 経絡: 経絡の流れに沿った症状や痛み。

5. 病勢(びょうせい)

病気の進行の速さや強さを示します。以下の観点があります。

  • 急性と慢性: 急に激しく現れる病か、緩やかに長く続く病か。
  • 虚実: 邪気が盛んな実証か、正気が不足する虚証か。
  • 強弱: 病勢が強いか、弱いか。
  • 転化: 病勢が時間の経過とともに変化すること。

まとめ

東洋医学では、病気を単なる症状の集合ではなく、原因・発病の仕組み・性質・位置・勢い の5つの視点から立体的にとらえます。
この総合的な病理観が、弁証論治(証を立てて治療を行う方法)の基礎となり、個々の患者に合わせたオーダーメイドの治療を可能にしています。

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