半表半裏とは

半表半裏(はんぴょうはんり)とは、病邪が体表(表)と体内(裏)との中間層にとどまり、どちらにも完全に抜けきらない状態を指します。
主に少陽病期(六経弁証の第三段階)に相当し、体の防衛反応と内部の病理変化がせめぎ合う過程にあるため、寒熱が交錯し、症状が表裏の両方に現れるのが特徴です。


原因

  • 外感邪気の侵入: 風寒・風熱などの外邪が、体表を突破して少陽経に侵入し、内部に入ろうとする途中で停滞する。
  • 邪正の鬱滞: 体の正気(抵抗力)が邪気と拮抗して、病邪が進退できずに半表半裏に留まる。
  • 誤治による邪の滞留: 発汗(解表)や下法を誤用し、邪を体の中間層に閉じ込めてしまう。
  • 体質要因: 気血不足や脾胃虚弱により、外邪を容易に排除できず、病邪が中途に滞る。

主な症状

  • 往来寒熱(寒気と発熱が交互に現れる)
  • 胸脇苦満(胸や脇の張り・圧迫感)
  • 食欲不振・口苦・咽乾
  • 悪心・嘔吐
  • めまい・耳鳴り
  • 情緒不安・ため息・口苦
  • 脈は弦・やや数

舌・脈の所見

  • 舌: やや紅、薄白苔または薄黄苔
  • 脈: 弦・やや数

病理機転

  • 外邪が体表を破って内に入る途中で少陽経に停滞し、表裏どちらにも抜けない。
  • 少陽経は「半表半裏」に位置し、三焦・胆経と関わるため、気機の昇降が阻害されやすい。
  • 気機の不利により、胸脇の張り、口苦、悪心などが生じる。
  • 寒熱が交錯するため、「往来寒熱」という典型的な少陽病の特徴が現れる。

代表的な方剤

  • 小柴胡湯(しょうさいことう): 半表半裏証の基本方。往来寒熱・胸脇苦満・食欲不振などに。
  • 柴胡桂枝湯(さいこけいしとう): 半表半裏に表証を兼ねる場合(悪寒・発熱・頭痛など)。
  • 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう): 半表半裏に精神不安・不眠・動悸を伴う場合。
  • 大柴胡湯(だいさいことう): 半表半裏に実熱・便秘・上腹部の膨満を伴う場合。

治法

  • 和解少陽 表裏の中間に滞る邪を調和させ、寒熱の交錯を和らげる。
  • 疏肝理気 胸脇部の鬱滞を解消し、気機の昇降を整える。
  • 健脾和胃 嘔吐・食欲不振などの脾胃症状を改善する。

養生の考え方

  • 無理な発汗や下法(下剤)を避ける。少陽病期では「和解」が最優先。
  • 過労・ストレスを避け、情志の安定を保つ(肝気鬱結を防ぐ)。
  • 温清調和の食事を心がける(辛・冷・脂っこいものは控えめに)。
  • 適度な休息と睡眠で気血を充実させ、邪気の排除を助ける。

まとめ

半表半裏とは、外邪が体表から内部へ進入する途中で停滞し、表裏の両面に症状を現す少陽病期の状態です。
治療の基本は「和解少陽」であり、寒熱・虚実の偏りを調整し、体内の調和を取り戻すことが要点です。

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