遺尿(いにょう)とは、本人の意志とは関係なく尿が漏れ出てしまう状態を指します。
小児に多くみられる夜尿(ねしょ)や、高齢者の尿失禁も含まれます。
東洋医学では、腎気不足・膀胱気化不利・脾肺気虚などが原因となり、膀胱の「開闔」が制御できなくなることで発生すると考えられています。
原因
- 腎気不足: 腎の固摂作用が弱く、膀胱を固く締められない。
- 膀胱虚寒: 陽気不足により、膀胱の開閉機能が低下。
- 脾肺気虚: 先天・後天両虚で気の固摂力が足りず尿を制御できない。
- 肝気失調: 情志の影響で気機が乱れ、膀胱の気化作用に影響。
- 小児の発育未充: 成長過程で腎気がまだ充実していない。
主な症状
- 睡眠中に無意識に排尿してしまう(小児夜尿)
- 日中も尿意を自制できず漏れる(高齢者の尿失禁)
- 顔色が白く元気がない、食欲不振(気虚タイプ)
- 腰膝のだるさ、冷え、四肢冷感(腎陽虚タイプ)
- 煩躁、夢が多い、心悸(心腎不交タイプ)
舌・脈の所見
- 舌: 淡、胖大、または紅。苔は白滑または薄黄。
- 脈: 沈細、弱、または弦細。
治療方針
- 補腎固摂: 腎気を補い、膀胱の開闔を調整。
- 温陽散寒: 腎陽不足・膀胱虚寒に対して陽気を助ける。
- 益気健脾: 脾肺気虚を補い、固摂作用を強化。
- 寧心安神: 心腎不交や情志不安による夜尿に対応。
- 代表方剤:補中益気湯、腎気丸、縮泉丸、桑螵蛸散など。
養生・注意点
- 小児の場合は叱責を避け、心身の成長を見守る。
- 冷えを避け、下半身を温める。
- 寝る前の過剰な水分摂取を控える。
- 高齢者は骨盤底筋を鍛える体操や生活改善を併用。
まとめ
遺尿は腎・膀胱・脾肺の虚損による「固摂失調」が主因であり、小児の夜尿や高齢者の尿失禁として現れます。
治療は「補腎固摂」「益気健脾」「温陽散寒」「寧心安神」を柱に、体質と原因に応じた方剤・生活改善を組み合わせます。
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