小便不通(しょうべんふつう/尿閉)とは、尿意はあるものの、尿が全く出ない、またはほとんど出ない状態を指します。
東洋医学では、膀胱・腎・三焦の気化機能の失常や、気滞・血瘀・湿熱の阻滞などによって尿道が閉塞されることが原因とされます。
急性の場合は現代医学的にも膀胱尿閉に相当し、緊急処置が必要となる場合があります。
原因
- 膀胱気化失司: 腎気不足や膀胱虚弱により、尿を通す機能が失調。
- 湿熱下注: 下焦に湿熱が滞り、尿路が閉塞。
- 気滞血瘀: 外傷や瘀血の停滞により膀胱経絡が阻まれる。
- 寒凝下焦: 寒邪が下焦を阻み、気化を妨げる。
- 老年体虚: 腎陽衰弱によって膀胱の開闔ができず、尿が出にくい。
主な症状
- 尿意はあるが排尿できない、あるいは極めて少量しか出ない
- 下腹部が膨満して苦しい、圧痛を伴うこともある
- 口渇、煩躁、舌紅、苔黄膩(湿熱型)
- 四肢冷感、面色白、舌淡、苔白滑(寒凝型・陽虚型)
舌・脈の所見
- 舌: 淡、紅、紫暗など原因に応じて変化。苔は白滑または黄膩。
- 脈: 沈細、沈遅、または滑数。
治療方針
- 通利小便: 膀胱の気化を回復させ、尿の通りを良くする。
- 清熱利湿: 湿熱による閉塞を取り除く。
- 活血化瘀: 瘀血阻滞がある場合は血行を改善。
- 温陽益腎: 腎陽虚や寒邪による場合は温補を行う。
- 代表方剤:八正散、竜胆瀉肝湯、済生腎気丸、真武湯など。
養生・注意点
- 排尿困難が急激に起こった場合は、現代医学的に膀胱尿閉の緊急処置(導尿など)が必要。
- 普段から冷えや湿気を避ける。
- 飲食では辛辣・アルコールを控え、淡味のある食事を心がける。
- 高齢者は腎気を補う養生を重視する。
まとめ
小便不通とは、膀胱の気化失調や湿熱・血瘀・寒凝などの病邪により、尿がまったく出ないかほとんど出ない病態です。
東洋医学的治療では「通利小便」「清熱利湿」「活血化瘀」「温陽益腎」などを行い、急性症状は西洋医学的な緊急処置と併用して対応することが重要です。
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