陰竭陽脱(いんけつようだつ) とは、陰液が極度に損耗して竭(つきはて)、それに伴って陽気も維持できなくなり、陰と陽がともに崩壊して生命が危殆に瀕する病証を指します。
「陰竭」は津液・精血の涸竭、「陽脱」は陽気の虚脱を意味し、両者が連動することで全身の機能が失調し、急速に悪化するのが特徴です。
原因
- 熱病の後期: 高熱や長期の熱邪により津液が大量に損耗し、陰液が枯渇。
- 出血や消耗性疾患: 大量出血や慢性消耗で精血が失われ、陰液が保てなくなる。
- 久病による陰損: 長期の病により精血が消耗し、陰竭に至る。
主な症状
- 皮膚乾燥、唇裂、口渇甚だしく水を欲す
- 呼吸微弱、精神恍惚
- 四肢冷却、汗出しきらず
- 顔色蒼白または潮紅から突然の虚脱
- 意識混濁、昏厥
舌・脈の所見
- 舌: 舌絳乾枯、裂紋あり、苔少または無苔
- 脈: 微細欲絶または虚大無力
治療方針
- 益気回陽・救陰固脱: 陰陽の崩壊を防ぎ、生命を保つことを最優先とする。
- 急救処置: 状況に応じて陰液を速やかに補い、同時に陽気を回復させる。
代表的な方剤
- 生脈散(しょうみゃくさん): 気陰両虚による脱証に用いる。
- 独参湯(どくじんとう): 元気虚脱の重篤症に用いる。
- 参附湯(じんぶとう): 陽気欲脱に偏る場合。
養生・注意点
- 陰竭陽脱は救急を要する危重証であり、迅速な治療が不可欠
- 普段から過労・消耗を避け、陰液を保養することが予防につながる
- 熱病・慢性疾患の経過中に早期の陰虚徴候を見逃さないことが重要
まとめ
陰竭陽脱とは、陰液の枯渇により陽気も維持できなくなり、陰陽がともに離散して危篤に陥る病証です。
治療の要点は「益気救陰・回陽固脱」であり、陰陽の崩壊を防ぐ迅速な処置が生死を分けます。
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