陰陽離決とは

陰陽離決(いんようりけつ) とは、体内における陰と陽の根本的なバランスが急激に崩れ、陰と陽が互いに依存できなくなって分離する危急の病証を指します。
陰陽は生命活動の根本であり、「陰は陽を守り、陽は陰を駆動する」関係にありますが、この調和が破綻すると生命維持が困難となり、しばしば危篤の状態に陥ります。


原因

  • 重病・久病による衰弱: 陰液や陽気のいずれかが極端に損耗し、互いに依存できなくなる。
  • 高熱や熱病: 熱極により陰液が大量に消耗し、虚脱を招く。
  • 寒邪の侵襲: 陽気を急激に損傷し、陰が孤立する。
  • 出血や大量発汗・下痢: 陰陽を同時に損失し、陰陽の離決に至る。

主な症状

  • 陰脱の兆候: 顔色は潮紅、煩躁、手足の熱、呼吸粗く、脈は虚大。
  • 陽脱の兆候: 顔色蒼白、冷汗、四肢厥冷、精神萎靡、脈微細欲絶。
  • 意識混濁や昏厥など、危篤の症状を呈する場合もある。

舌・脈の所見

  • 舌: 陰脱では舌紅絳少津、陽脱では舌淡胖、苔剥落
  • 脈: 陰脱では数大、陽脱では微細欲絶

治療方針

  • 回陽救逆: 陽脱時には急速に陽気を回復させる。
  • 益陰回生: 陰脱時には陰液を滋養し、熱を鎮める。
  • 陰陽の分離を防ぎ、生命活動を維持することを最優先とする。

代表的な方剤

  • 参附湯(じんぶとう): 陽気暴脱に用いる。
  • 生脈散(しょうみゃくさん): 陰液不足と気虚を同時に補う。
  • 独参湯(どくじんとう): 重篤な虚脱状態で用いる。

養生・注意点

  • 陰陽離決は危篤の証であり、速やかな救急対応が必要
  • 体力の低下や慢性病の悪化時には早めに養生・治療を行う
  • 陰陽を守るために無理な労働・過度の発汗や消耗を避ける

まとめ

陰陽離決とは、陰陽が分離して生命維持が困難となる危急の病証です。
治療は「回陽救逆」または「益陰回生」を状況に応じて用い、陰陽の根本を守り抜くことが最重要とされます。

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