概要
通竅(つうきょう)とは、 経絡・気血の流れを通じさせ、身体の竅(きょう:気血が通る通路や感覚器官)を開く治法である。 「竅」とは、身体の内外を連絡する孔穴や通道を指し、 広義には九竅(目・耳・鼻・口・二陰)をはじめ、 経絡・気血の通路・意識活動の通路なども含む。 この通路が邪気・痰湿・瘀血・寒凝などによって閉塞すると、 頭痛・鼻閉・昏迷・感覚異常などが生じる。
通竅法は、これらの閉塞を解消して気血の流通を促し、感覚・意識・痛みなどの回復を図るために用いられる。
主な作用
- 気血の通利:経絡や竅道の滞りを除く。
- 痰濁・瘀血・風寒の除去:閉塞の原因を取り除く。
- 感覚の回復:耳・鼻・目・口など感覚器の通利を促す。
- 疼痛・麻痺の改善:気血が通ることで痛みやしびれを軽減する。
つまり、「通じざればすなわち痛む(不通則痛)」の原理に基づき、 滞りを開いて流れを回復させることが本質である。
主な適応症状
- 頭痛・鼻閉・咽喉閉塞感
- 意識障害・昏迷・中風昏厥
- 耳鳴・難聴・嗅覚異常
- 気滞・瘀血による疼痛
- 顔面神経麻痺・半身不遂など経絡閉塞症状
特に鼻・頭部・意識・感覚の通路が閉じた状態に対して用いられることが多い。
原因別の治法方向
- 風寒閉竅:辛温開竅(例:蘇合香丸)。
- 痰熱閉竅:清熱開竅(例:安宮牛黄丸、至宝丹)。
- 瘀血阻竅:活血通竅(例:通竅活血湯)。
- 寒凝経脈:温経通竅(例:呉茱萸湯、当帰四逆湯)。
- 気滞鬱結:理気通竅(例:半夏厚朴湯)。
このように、「通竅」は単独の作用というより、 閉塞の原因(寒・熱・痰・瘀など)に応じて「温」「清」「化」「活」などの手法を組み合わせて行う。
代表的な方剤
- 通竅活血湯(つうきょうかっけつとう):活血通竅・祛風止痛。頭痛・顔面痛・鼻閉などに。
- 安宮牛黄丸(あんぐうごおうがん):清熱解毒・開竅醒神。高熱昏迷・痰熱閉竅に。
- 蘇合香丸(そごうこうがん):温開通竅・行気止痛。寒閉昏厥・突然の意識障害に。
- 至宝丹(しほうたん):清熱化痰・開竅醒神。痰熱壅閉による昏迷・高熱などに。
- 呉茱萸湯(ごしゅゆとう):温中散寒・通竅止痛。寒による頭痛・嘔吐に。
まとめ
通竅法とは、経絡・気血・感覚通路の閉塞を開き、通利させる治法である。 閉塞の原因が寒であれば温通、熱であれば清通、痰瘀であれば化痰・活血を行う。 臨床的には頭痛・鼻閉・意識障害・神経麻痺などに応用され、 代表方剤は通竅活血湯・安宮牛黄丸・蘇合香丸などである。 その本質は、「滞りを通じて、気血と神明の通路を回復させる」ことである。
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