📘 基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 方剤名 | 呉茱萸湯(ごしゅゆとう) |
| 出典 | 『傷寒論』 |
| 分類 | 温中降逆剤(寒による胃気上逆・頭痛・嘔吐に) |
| 保険適用エキス製剤 | 呉茱萸湯(ツムラ30、クラシエ30など) |
| 構成生薬 | 呉茱萸・人参・生姜・大棗 |
🧭 方意(効能と主治)
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 効能 | 温中補虚、降逆止嘔、止痛。 |
| 主治 |
寒による胃気上逆で、嘔吐・頭痛・悪心を伴うもの。 特に「みぞおちが冷えて痛む」「吐いても温かいものを欲する」「頭痛が激しく、手足は冷える」など。 偏頭痛・慢性胃炎・周期性嘔吐・乗り物酔い・片頭痛性嘔吐などに応用。 |
| 病機 |
寒邪が中焦(胃)を犯して気機が上逆し、嘔吐や頭痛を起こす。 呉茱萸が下焦を温めて寒を散じ、胃気を降ろす。 人参・大棗が脾胃を補い、生姜が胃を温めて嘔吐を止める。 |
🌡 臨床的特徴
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 典型的症状 |
・激しい頭痛(特に片側、または頭頂部) ・悪心、嘔吐(食物を吐くが、吐いた後に温かい飲食を欲する) ・みぞおちの冷え、痛み、つかえ感 ・手足の冷え、顔色が悪い ・冷え性で虚弱な人に多い |
| 体質傾向 | 胃寒による虚弱体質。冷えやすく、胃腸が弱い人。 |
| 舌診 | 淡白、白苔。 |
| 脈診 | 沈・遅・弱。 |
💊 構成生薬と作用
| 生薬 | 主要作用 |
|---|---|
| 呉茱萸(ごしゅゆ) | 辛熱性。胃を温め、逆気を下ろし、嘔吐・頭痛を止める。 |
| 人参 | 脾胃を補い、虚弱を改善する。 |
| 生姜 | 胃を温めて嘔吐を止める。寒による胃の不快感を緩和。 |
| 大棗 | 脾胃を和し、生姜とともに中を温める。 |
🩺 現代医学的な理解
- 消化管運動の調整:胃の蠕動運動を整え、逆流や嘔吐を抑制。
- 血流改善・鎮痛作用:脳血管収縮・拡張の調節により片頭痛を緩和。
- 中枢性制吐作用:延髄の嘔吐中枢を抑制。
- 代謝促進・体温上昇:交感神経を刺激し、体温を上げる。
💬 臨床応用例
- 冷えを伴う片頭痛、群発頭痛。
- 周期性嘔吐症、乗り物酔い。
- 冷え性の胃痛、胃腸虚弱、悪心。
- 慢性胃炎、胃下垂。
- 月経前に悪心・頭痛を伴う者。
⚖️ 類方鑑別
| 方剤名 | 鑑別点 |
|---|---|
| 小半夏加茯苓湯 | 胃内に水がたまり、めまいや水様嘔吐を伴う場合。 |
| 人参湯 | 胃の冷えと嘔吐が主で、頭痛がない場合。 |
| 半夏瀉心湯 | みぞおちのつかえ(寒熱錯雑)で、嘔吐よりも腹満感が主体の場合。 |
| 茯苓飲 | 水滞による嘔気・胸やけを伴う場合。 |
⚠️ 使用上の注意
- 熱証(口渇、顔の紅潮、便秘)には不適。
- 呉茱萸は辛熱性が強く、胃熱がある場合は悪化することがある。
- 長期連用は避け、症状改善後は漸減・中止が望ましい。
📖 メモ(臨床的要点)
- 「吐いて温かいものを欲する」患者に最も適す。
- 冷えからくる片頭痛・悪心・胃痛の要方。
- 四肢冷感とともに嘔吐・頭痛を訴える場合の第一選択。
- 生理前や空腹時に悪化する頭痛にも有効。
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