概要
通鼻竅（つうびきょう）とは、 鼻の竅（通路）を開き、鼻の通りを良くする治法である。 「竅（きょう）」とは、気血が出入りする孔道を指し、 鼻は「肺の竅」とされ、肺気の宣発・粛降と密接に関係する。 風寒・風熱・湿濁・痰滞・瘀血などによって鼻竅が閉塞すると、 鼻塞（鼻づまり）・嗅覚異常・頭重感・頭痛などが起こる。 通鼻竅法はこれらの閉塞を解除し、気血・津液の流通を回復させて鼻の通利を図る治法である。
主な作用
- 鼻竅の通利：鼻閉・鼻塞を解消する。
- 気血の流通促進：頭面部の経絡を開き、鬱滞を除く。
- 肺気の宣発を助ける：肺気が通じることで呼吸が整う。
- 嗅覚の回復：気機が通じることで感覚機能が回復する。
つまり「鼻は肺の竅」であるため、通鼻竅は肺気を宣通させる一環でもある。
主な適応症状
- 鼻閉・鼻塞・鼻漏
- 嗅覚異常・嗅覚減退
- 鼻腔内の乾燥または痰涕多い
- 頭重・頭痛・前額部痛
- 鼻ポリープ・慢性鼻炎・副鼻腔炎
特に、風寒・風熱・湿濁・痰熱・瘀血などによって鼻竅が塞がる場合に適応する。
主な病機と対応する治法方向
- 風寒閉塞：辛温解表・通竅（例：蒼耳子散、辛夷清肺湯の初期）。
- 風熱犯肺：疏風清熱・宣肺通竅（例：辛夷清肺湯、銀翹散）。
- 湿熱鬱滞：清熱除湿・通竅（例：竜胆瀉肝湯、黄連解毒湯などを応用）。
- 痰濁阻竅：化痰通竅（例：二陳湯合蒼耳子散）。
- 瘀血閉塞：活血化瘀・通竅（例：通竅活血湯）。
- 肺気不足・衛外不固：補気固表・宣肺通竅（例：玉屏風散）。
したがって、通鼻竅法は原因に応じて「温」「清」「化」「活」「補」を使い分けて行う。
代表的な方剤
- 辛夷清肺湯（しんいせいはいとう）：清熱宣肺・通鼻竅。慢性鼻炎・副鼻腔炎に。
- 蒼耳子散（そうじしさん）：疏風通竅・止痛。急性鼻炎・鼻閉に。
- 通竅活血湯（つうきょうかっけつとう）：活血通竅・祛風止痛。鼻閉・頭痛・瘀血性鼻疾患に。
- 銀翹散（ぎんぎょうさん）：疏風清熱・宣肺解毒。風熱感冒による鼻閉・咽痛に。
- 玉屏風散（ぎょくへいふうさん）：益気固表・通鼻竅。鼻アレルギーや感冒反復に。
臨床応用のポイント
- 鼻閉・鼻炎の治療では、原因の邪気（寒・熱・湿・痰・瘀）を明確にすることが重要。
- 風寒・風熱が主なら発散解表、湿熱・痰濁が主なら清化・除湿を加える。
- 慢性化して血瘀を伴うときは活血通竅薬を配合する。
- 鼻閉が虚証（肺気虚・衛気不固）による場合は補気固表を行う。
- 急性期には桔梗・薄荷・辛夷・蒼耳子などの芳香通竅薬を使用する。
まとめ
通鼻竅法とは、 鼻の閉塞を除き、肺気を宣通させて呼吸・嗅覚を回復する治法である。 風寒・風熱・湿熱・痰濁・瘀血などによる鼻閉に応じて、 辛温・清熱・化痰・活血などの方法を組み合わせる。 代表方剤は辛夷清肺湯・蒼耳子散・通竅活血湯などであり、 鼻炎・副鼻腔炎・嗅覚障害などに広く応用される。
0 件のコメント:
コメントを投稿