陽維脈

概要

陽維脈は、「身体の外側(陽分)」に分布する陽経を結び合わせる経脈です。
「維(い)」とは、“つなぐ・まとめる・維持する”という意味。
つまり陽維脈は、
“全身の陽の流れ(活動エネルギー)を維持し、調和させる経脈”。
督脈と密接に関わり、身体の表面・外側・防衛機能・体温調整・行動力などを統率します。
陰維脈が「内面(陰)の調和」を司るのに対し、陽維脈は「外面(陽)の調和」を保つ働きを担います。


 別名と象徴

  • 別名: 陽気をつなぐ脈
  • 象徴: 「外界と調和する陽のネットワーク」
  • 主な働き: 活動・行動・外的防御・陽気のバランス維持


経絡の流れ

  • 起点: 足の太陽膀胱経「金門(きんもん)」付近
  • 流れ
    → 外くるぶし → ふくらはぎ外側 → 大腿外側 → 腋の下 →
    → 肩 → 首 → 頬 → 耳後部 → 最後に督脈「風池(ふうち)」へ接続。
身体の外側・背面・側面を経て、最終的に頭部へ上がって陽気を統べます。


主な作用

働き 内容
① 陽気の統合 六つの陽経(大腸・小腸・三焦・胃・膀胱・胆)をまとめ、外側の気を調える。
② 防衛と適応 外界の変化(寒熱・気候・ストレス)に対応し、体温や免疫を保つ。
③ 活動リズムの維持 覚醒・行動・筋肉の働きを助ける。
④ 睡眠と覚醒のバランス 睡眠のリズムを支える(陰維脈と対をなす)。


関連臓腑・性質

  • 所属: 奇経八脈
  • 性質: 陽
  • 主な関連経脈: 足の少陽胆経
  • 関連臓腑: 胆・膀胱・三焦
  • 表裏関係: 陰維脈(内側のバランス調整)


経穴(代表的なもの)

陽維脈の経穴は、主に足の少陽胆経上に並びます。
その中でも「八脈交会穴(はちみゃくこうえけつ)」である外関(がいかん)が代表的です。

経穴名(読み) 所属経絡 主な効能
外関(がいかん) 手の少陽三焦経 陽維脈を開く代表穴。発熱・頭痛・首肩のこり・外感症状。
陽交(ようこう) 胆経 陽気の滞りを除き、めまい・背中のこりに。
巨髎(こりょう) 胃経 顔面神経麻痺・歯痛。
本神(ほんしん) 胆経 精神安定・めまい・頭重。
風池(ふうち) 胆経/督脈交会 頭痛・のぼせ・目の疲れ・風邪。


主な症状・異常

陽維脈の失調は、「陽気が過剰または不足」しているサインとして現れます。
  • 発熱・悪寒・風邪を引きやすい
  • 肩・首・背中のこり
  • 頭痛・めまい・耳鳴り
  • 神経過敏・ストレスによる不眠
  • 背部・側頭部の緊張感
  • 全身の倦怠感や無気力感(陽気の不足)


養生のポイント

  • 朝は日光を浴びて陽気を取り入れる
  • 軽い運動やストレッチで身体の外側をほぐす
  • 首・肩・背中の緊張をためない(陽維脈の通り道)
  • ストレスや過労で「陽気の枯渇」を起こさない
  • 夜更かしを避けて、陰陽の切り替えを意識する


象徴的な経穴:外関(がいかん)

  • 位置: 手首の外側中央、手首のしわから上に2寸(人差し指と中指の幅2本分)
  • 所属経絡: 手の少陽三焦経
  • 効能: 発熱・頭痛・風邪・肩こり・精神不安
  • 特徴: 陽維脈の「開穴(かいけつ)」であり、外界に対する防衛力(免疫・代謝)を高める。
「外関」は、“外の関門を開くツボ”。
外的ストレスや気候変化から身体を守る防御線を整える役割を果たします。


一言まとめ

陽維脈は「陽気をつなぐ糸」。
外界と身体を調和させ、活動と防衛のリズムを整える。
疲れた時、風邪を引きやすい時こそ、
陽維脈を通して“陽の巡り”を回復させよう。

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