概要
足の太陰脾経は、脾(ひ)に属し、胃とともに「後天の本(こうてんのもと)」=生命エネルギーの源をつかさどります。
脾は「運化(うんか)」の働き(消化吸収・水分代謝)を担い、胃が受け取った飲食物から気・血・津液を作り出します。
また、「血を統べる(出血を防ぐ)」「四肢を養う」「思の感情を調える」といった働きもあり、全身のエネルギーや安定に深く関わります。
経絡の流れ
- 起点: 足の親指の内側端(隠白:SP1)
- 流れ:
→ 足の内側 → くるぶし → すねの内側 → 膝 → 太もも内側 →
→ 鼠径部 → 腹部 → 胃 → 脾に属す → 胸に上がり、心包に通じる - 絡経:
脾から分かれて横隔膜を通り、舌の根・舌の下に至る。
→ そのため、脾経は「味覚・発声」とも関係します。
経穴(けいけつ)一覧
番号 | 経穴名 | 読み | 主な位置 | 主な効能 |
---|---|---|---|---|
SP1 | 隠白 | いんぱく | 足の親指の内側端 | 出血・不眠・精神不安 |
SP2 | 大都 | だいと | 親指の付け根 | 胃痛・食欲不振 |
SP3 | 太白 | たいはく | 第一中足骨頭の後方 | 胃腸虚弱・むくみ |
SP4 | 公孫 | こうそん | 第一中足骨の内縁 | 胃痛・月経不順(衝脈の要穴) |
SP5 | 商丘 | しょうきゅう | 内くるぶし前下方 | 関節痛・むくみ |
SP6 | 三陰交 | さんいんこう | 内くるぶし上3寸 | 婦人科疾患・冷え・むくみ |
SP7 | 漏谷 | ろうこく | 三陰交の上3寸 | 下肢のむくみ・倦怠感 |
SP8 | 地機 | ちき | 脛骨内側の下1/3 | 月経痛・腹痛 |
SP9 | 陰陵泉 | いんりょうせん | 脛骨内側下端のくぼみ | むくみ・膝痛・水分代謝調整 |
SP10 | 血海 | けっかい | 膝上内側2寸 | 血の滞り・月経異常・湿疹 |
SP11 | 箕門 | きもん | 大腿内側中央 | 下肢痛・鼠径部の不快 |
SP12 | 衝門 | しょうもん | 鼠径部 | 下腹部痛・生殖器疾患 |
SP13〜SP16 | 腹結〜腹哀 | ふくけつ〜ふくあい | 下腹部 | 腹部膨満・便秘 |
SP17〜SP21 | 食竇〜大包 | しょくとつ〜だいほう | 胸・脇腹部 | 呼吸困難・脇痛・全身倦怠 |
関連臓腑
- 所属: 脾
- 表裏関係: 足の陽明胃経
- 五行: 土
- 感情: 思(思い悩む・考えすぎ)
- 季節: 長夏(梅雨〜初秋)
- 体の部位: 口・唇・舌・四肢・筋肉
主な症状・異常
- 食欲不振・胃のもたれ・下痢・便秘
- 手足のだるさ・むくみ・冷え
- 月経不順・生理痛・不妊・更年期障害
- 出血傾向(鼻血・歯ぐきの出血・皮下出血)
- 疲労感・集中力低下・憂うつ・考えすぎ
- 舌の異常(重い・腫れ・味覚障害)
養生のポイント
- 「冷たいもの」「甘いもの」「生もの」を控える
- よく噛んで食べ、食後は軽く体を動かす
- 体を冷やさず、特にお腹と下半身を温める
- 思い悩みすぎず、「安心して食べる・休む」ことを大切に
- 脾を補う食材:もち米・さつまいも・山芋・かぼちゃ・生姜・黒豆
象徴的な経穴:三陰交(さんいんこう)
- 位置: 内くるぶしの上3寸、脛骨の後ろのきわ
- 特徴:
- 脾・肝・腎の三つの陰経が交わる重要なツボ
- 婦人科疾患・冷え・むくみ・不眠などに効果的
- 注意: 妊娠中は刺激を避ける(陣痛を促す作用あり)
象徴的なもう一穴:血海(けっかい)
- 位置: 膝上内側、膝蓋骨の上内角から2寸上
- 効能: 血の滞りを解消し、月経異常や湿疹などに効果
一言まとめ
「脾」は“消化と運搬の要”
食べたものをエネルギー(気血)に変え、全身を養う。
思い悩みすぎ・甘いものの摂りすぎ・冷えが脾を弱める。
0 件のコメント:
コメントを投稿