足の陽明胃経

概要

足の陽明胃経は、胃の機能と消化吸収を主る経絡です。
「後天の本」といわれる脾とともに、飲食物を消化して気血を生み出す源となります。
また、経絡は顔面から足先まで身体の前面を走行し、目・口・喉・胸・腹部・脚など広範囲の症状に関係します。


経絡の流れ

  • 起点: 鼻の両脇(迎香:LI20)
  • 流れ
    迎香 → 目の下(承泣) → 顔の側面 → 下顎 → 首 → 
    → 鎖骨下 → 胸 → 胃・脾に属す → 腹部 → 鼠径部 →
    → 太もも前面 → すね → 足の甲 → 第二趾(人差し指)外側端(厲兌)
  • 絡経
    膝のあたりから分かれて背部を上行し、脾経と連絡します。


経穴(けいけつ)一覧

番号 経穴名 読み 主な位置 主な効能
ST1 承泣 しょうきゅう 眼の下 目の充血・視力低下
ST2 四白 しはく 目の下のくぼみ 顔面けいれん・目の疲れ
ST3 巨髎 こりょう 鼻の横 鼻炎・顔面神経痛
ST4 地倉 ちそう 口角外側 口のゆがみ・唇のしびれ
ST5 大迎 だいげい 下あごの角 歯痛・顔面けいれん
ST6 頰車 きょうしゃ 顎をかむと盛り上がる筋上 顎関節症・歯ぎしり
ST7 下関 げかん 耳前のくぼみ 顎痛・耳鳴り
ST8 頭維 ずい 前頭部の角 頭痛・めまい
ST9 人迎 じんげい のどの両脇、動脈の上 高血圧・咽喉痛
ST10 水突 すいとつ 頸部中央 咳・喘息
ST11 気舎 きしゃ 鎖骨上窩外側 喉の腫れ
ST12 缺盆 けつぼん 鎖骨上窩中央 胸のつかえ
ST13〜ST18 (胸腹部の経穴) 胸・乳房周囲 胸痛・乳房炎
ST19〜ST30 不容〜気衝 ふよう〜きしょう 胃〜下腹部 胃痛・便秘・下痢・月経痛
ST31 髀関 ひかん 太もも付け根 下肢痛・股関節痛
ST32 伏兎 ふくと 太もも前側中央 脚の疲れ・こむら返り
ST33 陰市 いんし 膝上3寸 膝の痛み
ST34 梁丘 りょうきゅう 膝上2寸 急な胃痛・膝痛
ST35 犢鼻 とくび 膝の下のくぼみ 膝関節炎
ST36 足三里 あしさんり 膝下3寸、脛骨外側 胃腸虚弱・疲労・免疫強化
ST37 上巨虚 じょうこきょ 膝下6寸 大腸疾患・下痢
ST38 条口 じょうこう 膝下8寸 肩の痛み(遠隔治療点)
ST39 下巨虚 げこきょ 膝下9寸 小腸疾患
ST40 豊隆 ほうりゅう ふくらはぎ外側 痰の多い咳・めまい
ST41 解渓 かいけい 足首前面中央 胃痛・足首痛
ST42 衝陽 しょうよう 足背の動脈上 胃の働きを整える
ST43 陷谷 かんこく 第二中足骨の間 浮腫・足のだるさ
ST44 内庭 ないてい 第二趾と第三趾の間 胃痛・口内炎
ST45 厲兌 れいだ 第二趾の外側端 顔のむくみ・不眠・発熱


関連臓腑

  • 所属: 胃
  • 表裏関係: 足の太陰脾経
  • 五行: 土
  • 感情: 思(思い悩む)
  • 季節: 長夏(梅雨〜初秋)
  • 体の部位: 胃・口・歯・顔・乳房・脚の前面


主な症状・異常

  • 胃痛・胸やけ・吐き気・食欲不振
  • 顔面のむくみ・麻痺・歯痛・鼻炎
  • 便秘・下痢
  • 脚のだるさ・膝痛
  • 神経過敏・不安・過食・夢が多い
  • 熱性疾患(発熱、のどの渇きなど)


養生のポイント

  • 規則正しい食事(時間・量・内容)を心がける
  • 冷たい飲食・暴飲暴食を避ける
  • よく噛み、腹八分目
  • 脾胃を助ける食材:米・山芋・カボチャ・生姜・キャベツ など
  • 思い悩みすぎず「リラックスして食べる」ことが大切


象徴的な経穴:足三里(あしさんり)

  • 位置: 膝下3寸(約指4本分)、脛骨の外側
  • 効能
    • 胃腸機能の調整
    • 疲労回復・免疫力強化
    • 長寿のツボ(養生の代表)
  • 養生法: 毎日お灸をすえると「老いを防ぐ」と言われます。


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