概念
化痰熄風（かたんそくふう）とは、痰熱や肝風内動によって引き起こされる眩暈・震え・痙攣などの症状を、痰を除き風を鎮めることによって治す治法である。 「風は動を主り、痰は濁を主る」とされ、痰熱が内に鬱して風を動かすと、 眩暈・頭痛・手足の震え・痙攣・意識障害などが現れる。 したがって本法では、痰を化し・風を熄め・肝を平らげて神志を安んずることを目的とする。
所属
熄風法（そくふうほう）および化痰法（かたんほう）の併用法に属する。
効能
- 痰を除き、気機を通暢にする（化痰開竅）。
- 内風を鎮め、痙攣や眩暈を止める（熄風止痙）。
- 肝の陽気を抑えて平らげる（平肝潜陽）。
- 心神を安定させ、意識を清める（安神開竅）。
主治
病機
痰と風は互いに助け合って病を形成する。痰熱が体内に滞ると清陽の気が昇らず、濁陰が上擾して風を動かす。 また、肝陽が亢進すると風を内生し、風が痰を挙げて経絡を阻むため、眩暈・痙攣・中風などが起こる。 治療では、化痰と熄風を同時に行い、肝風痰熱を鎮めて経絡を通暢させることが重要である。
代表方剤
- 天麻鉤藤飲（てんまこうとういん）：平肝熄風・清熱化痰。高血圧・眩暈・頭痛・手足の震えに用いる。
- 羚角鉤藤湯（れいかくこうとうとう）：清熱熄風・養陰増液。高熱や痙攣、意識障害を伴う熱性疾患に用いる。
- 鎮肝熄風湯（ちんかんそくふうとう）：平肝潜陽・滋陰熄風。肝腎陰虚による肝陽上亢に用いる。
- 半夏白朮天麻湯（はんげびゃくじゅつてんまとう）：化痰祛風・健脾燥湿。痰湿による眩暈や頭重感に適す。
臨床応用
- 脳卒中後遺症・めまい・頭痛・手足の震え。
- パーキンソン病・メニエール病などの痰風内動型。
- 高血圧・動脈硬化などで頭部の熱・風・痰が盛んな場合。
- 小児熱性痙攣・癲癇などの痰熱動風証。
使用上の注意
- 寒痰・湿痰による症状では、温化痰湿薬と併用する。
- 虚風内動（陰虚風動）の場合は、滋陰熄風薬を配合する。
- 肝陽亢盛が著しい場合は、平肝潜陽薬を加える。
まとめ
化痰熄風法は、痰熱が風を動かして起こる眩暈・痙攣・中風などに対し、痰を除き風を鎮めて肝胆の異常を平らげる治法である。 代表方剤は天麻鉤藤飲・羚角鉤藤湯・半夏白朮天麻湯などであり、 肝風・痰熱・上逆を同時に調整することが臨床上の要点である。
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