📘 基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 方剤名 | 白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう) |
| 出典 | 『傷寒論』 |
| 分類 | 清熱瀉火剤・益気生津剤 |
| 構成生薬 | 石膏・知母・粳米・甘草・人参 |
| 方名の由来 |
白虎湯に人参を加えた方剤。 白虎は金気を象徴し、清熱瀉火の強力な作用を示す。 人参を加えて気を補い、津液を生じる。 |
🧭 方意(効能と主治)
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 効能 | 清熱瀉火・益気生津 |
| 主治 |
気津両傷を伴う陽明経の熱盛(ようめいけいのねつせい)。 発熱・強い口渇・多汗・倦怠感・大熱・大渇・大汗・脈洪大など。 熱による体力消耗や脱水を伴う症状。 糖尿病・暑気あたり・熱中症・高熱後の倦怠などにも応用。 |
| 病機 |
強い熱邪が気分に入り、津液を消耗するため、 「気津両傷(気も津も損なわれる)」の状態となる。 その結果、発熱・口渇・多汗・脱力感などが現れる。 |
💊 構成生薬と作用
| 生薬 | 主な作用 |
|---|---|
| 石膏(セッコウ) | 清熱瀉火・除煩止渇。陽明熱を強力に冷ます主薬。 |
| 知母(チモ) | 清熱滋陰・生津止渇。石膏と相須して熱を瀉し、津を生じる。 |
| 人参(ニンジン) | 益気生津。強い熱で消耗した気津を補う。 |
| 粳米(コウベイ) | 養胃生津。胃陰を保護し、滋潤を助ける。 |
| 甘草(カンゾウ) | 益気調中・緩和薬性。石膏の寒性を和らげる。 |
🌡 臨床的特徴
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 症状の特徴 |
・強い口渇と大量の水を欲する ・高熱・多汗・ほてり・のぼせ ・皮膚熱感、顔面紅潮 ・倦怠感、虚脱感、体がだるい ・イライラ、頭痛、煩躁 ・尿が濃く、少ない |
| 体質傾向 |
実熱傾向だが、発汗や熱による消耗が強く、気虚を伴う。 熱に弱く、夏に体調を崩しやすいタイプ。 |
| 舌象・脈象 |
舌:紅・乾・少苔。 脈:洪大・数・やや虚。 |
🩺 現代医学的応用
- 糖尿病(口渇・倦怠・多尿)
- 熱中症・日射病・暑気あたり
- 高熱疾患・インフルエンザ後の脱力
- 肺炎・扁桃炎などで熱が下がらず倦怠する場合
- 高体温症・甲状腺機能亢進症
⚖️ 類方・比較
| 方剤 | 特徴・鑑別点 |
|---|---|
| 白虎湯 | 清熱作用が主体。津液の消耗が軽い場合。 |
| 竹葉石膏湯 | 熱後の虚弱で、気津両虚が進み、微熱や乾咳が残る場合。 |
| 生脈散 | 発汗過多・脱水後の虚脱感・心悸など、益気生津が中心。 |
| 清暑益気湯 | 夏の暑さによる疲労倦怠・食欲不振など、虚証寄り。 |
⚠️ 使用上の注意
- 虚寒証や冷え性の人には不向き。
- 発熱が軽く、汗が出ない場合は適応外。
- 胃腸虚弱者では石膏の寒性により食欲低下を起こすことがある。
📖 メモ(臨床要点)
- 「清熱瀉火+益気生津」の両面を兼ね備える清熱剤。
- 熱中症や糖尿病など、熱と乾き・倦怠が同時にあるときに最適。
- 白虎湯の強力な清熱力を維持しつつ、虚を防ぐバランス型。
- 清熱とともに「体力を戻す」方剤で、夏バテにも応用可能。
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