手の厥陰心包経

概要

手の厥陰心包経は、心包(しんぽう)に属します。
心包とは、心臓を包む膜のことであり、外界の刺激や強い感情(ストレス・衝撃)から「心」を守るクッションのような存在です。
心包経は、血液循環や精神安定に関わるほか、胸の詰まり感・不安・動悸・自律神経の乱れなどにも作用します。


経絡の流れ

  • 起点: 胸中(心包)
  • 流れ
    → 胸を出て肋間を通り → 腋下 → 上腕の内側中央 → 前腕中央 →
    → 手のひら中央 → 中指の先端へ
  • 分枝
    胸中から三焦(さんしょう:体内の水分代謝経路)に通じる。


経穴(けいけつ)一覧(代表的なもの)

番号 経穴名 読み 主な位置 主な効能
PC1   天池 てんち 胸の乳頭の外側 胸の張り・乳腺炎・咳
PC3 曲沢 きょくたく 肘の内側のくぼみ 胸痛・心悸・肘の痛み
PC4 郄門 げきもん 手首上5寸 動悸・不安・急な胸痛
PC5 間使 かんし 手首上3寸 不眠・吐き気・不整脈
PC6 内関 ないかん 手首上2寸、2本の腱の間 胸のつかえ・不安・めまい・乗り物酔い
PC7 大陵 だいりょう 手首のしわ上、中央 不眠・心悸・手の震え
PC8 労宮 ろうきゅう 手のひら中央 ストレス・不眠・多汗
PC9 中衝 ちゅうしょう 中指の爪の外側端 意識障害・高熱・動悸


関連臓腑

  • 所属: 心包
  • 表裏関係: 手の少陽三焦経
  • 五行: 火
  • 感情: 喜(よろこび)
  • 季節: 夏
  • 体の部位: 胸・舌・心・血脈


主な症状・異常

  • 動悸・胸の圧迫感・不安感
  • 不眠・めまい・ヒステリー・神経過敏
  • 吐き気・乗り物酔い
  • 手のしびれ・腕のだるさ
  • 多汗・熱感・情緒不安
  • 高熱や意識混濁(心熱の亢進)


養生のポイント

  • ストレスをためず、「気持ちを胸に閉じ込めない」
  • 深呼吸や軽い運動で胸を開き、気の巡りを良くする
  • 苦味・酸味のある食材で熱を冷ます(緑茶・レモン・トマトなど)
  • 十分な睡眠で“心の熱”を鎮める
  • 喜びや笑いをバランス良く保つ(過剰な興奮も心包を疲れさせる)


象徴的な経穴①:内関(ないかん)

  • 位置: 手首のしわから上2寸、2本の腱の間
  • 効能: 動悸・胸のつかえ・不安・吐き気・乗り物酔い
  • 特徴: 「心身をつなぐ扉」
    → 精神を落ち着け、自律神経・消化・循環を同時に整える万能穴。


象徴的な経穴②:労宮(ろうきゅう)

  • 位置: 手のひら中央(中指と薬指を軽く曲げたときに触れる所)
  • 効能: ストレス・不眠・動悸・多汗
  • 特徴: 「心火を冷ます」ツボ。
    感情の熱を鎮め、リラックスを促す。


象徴的な経穴③:曲沢(きょくたく)

  • 位置: 肘の内側のしわ中央
  • 効能: 胸の熱・心悸・不整脈・肘痛
  • 特徴: 「心火を瀉(しゃ)す」—過度な興奮や心熱を冷ます要穴。


一言まとめ

「心包経」は“心の盾”。
感情の衝撃から心を守り、胸の気と血をめぐらせる経脈。
不安・動悸・ストレス・不眠など、心の乱れを穏やかに整える。
 

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