概要
足の少陰腎経は、腎(じん)に属し、「精(せい)」「気」「陰陽」の根本を蓄える経脈です。
腎は、生命の根源的なエネルギー(腎精)を貯え、身体の成長・発育・生殖・老化・水分代謝・骨や髪の健康を支えます。
さらに、腎経は「恐れ」や「意志の力(志)」とも関係し、精神の根っこの安定にも深く関与します。
経絡の流れ
- 起点: 足の小指の下(膀胱経の至陰の下)
- 流れ:
足裏(湧泉) → 足の内側 → くるぶし内側 → ふくらはぎ内側 →
膝裏 → 太ももの内側 → 腹部 → 腎臓に入る → 膀胱と連絡する。 - 分枝:
腎から肝・肺・心・舌根にまで上行し、全身の「精」「気」「水」をめぐらせる。
経穴(けいけつ)一覧(主な代表穴)
番号 | 経穴名 | 読み | 主な位置 | 主な効能 |
---|---|---|---|---|
KI1 | 湧泉 | ゆうせん | 足裏、土踏まずのやや前 | のぼせ・不眠・意識混濁・気の沈静 |
KI2 | 然谷 | ねんこく | 足の内側、くるぶし下方 | のぼせ・喉の渇き・生理不順 |
KI3 | 太渓 | たいけい | 内くるぶしとアキレス腱の間 | 腎機能強化・冷え・耳鳴り・腰痛 |
KI4 | 大鍾 | だいしょう | 太渓の後下方 | 不安・恐怖・足腰のだるさ |
KI5 | 水泉 | すいせん | 太渓の下方0.5寸 | 月経不順・排尿異常 |
KI6 | 照海 | しょうかい | 内くるぶし下方のくぼみ | 不眠・喉の渇き・月経異常 |
KI7 | 復溜 | ふくりゅう | 太渓の上2寸 | 発汗異常・むくみ・腎虚 |
KI10 | 陰谷 | いんこく | 膝裏内側のくぼみ | 泌尿器疾患・生殖機能低下 |
KI16 | 肓兪 | こうゆ | 臍の両側0.5寸 | 腹部膨満・腸の不調 |
KI27 | 俞府 | ゆふ | 鎖骨下、胸の最上部 | 呼吸困難・咳・胸のつかえ |
関連臓腑
- 所属: 腎
- 表裏関係: 足の太陽膀胱経
- 五行: 水
- 感情: 恐(おそれ)
- 季節: 冬
- 体の部位: 耳・骨・腰・生殖器・髪
主な症状・異常
- 腰痛・下肢の冷え・むくみ
- 頻尿・夜間尿・尿漏れ・排尿困難
- 耳鳴り・難聴
- 不妊・性機能低下・生理不順
- 不眠・無気力・恐れ・不安感
- 慢性疲労・老化・足腰のだるさ
養生のポイント
- 体を冷やさず、特に「下半身を温める」こと
- 睡眠を十分にとり、エネルギーを貯める
- 塩味・黒い食材(黒豆、黒ごま、昆布、ひじきなど)を適度に摂る
- 早起きよりも「早寝」を重視する
- 恐れや焦りを鎮め、「静」の時間を大切に
象徴的な経穴①:湧泉(ゆうせん)
- 位置: 足裏のやや前方、土踏まず中央のくぼみ
- 意味: 「気が湧き出る泉」
- 効能: のぼせ・不眠・高血圧・神経の興奮を鎮める
- 特徴: 心身の“気”を下へ降ろし、落ち着きを取り戻す要穴。
象徴的な経穴②:太渓(たいけい)
- 位置: 内くるぶしとアキレス腱の間のくぼみ
- 効能: 腎の基本調整点。冷え・耳鳴り・腰痛に最適。
- 特徴: 「腎の原穴」—生命エネルギーを直接補う要穴。
象徴的な経穴③:照海(しょうかい)
- 位置: 内くるぶしの下のくぼみ
- 効能: 不眠・喉の渇き・女性の生理異常
- 特徴: 陰蹻脈の起始穴で、心の落ち着きとホルモンバランスを調える。
一言まとめ
「腎経」は“生命の根”。
生命力・意志・静けさ・水の代謝を司る、存在の基盤となる経脈。
心身の「根の気」が足元から静かに湧き出す経路。
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