足の厥陰肝経

概要

肝は、東洋医学では「将軍の官」とされ、気血の流れを調え、情緒・筋肉・目・月経などを支配します。
肝経は、足の親指から始まり、脚の内側 → 鼠径部 → 下腹部 → 胸 → のど → 目の周囲へと上る経絡で、体の「内面と精神の流れ」を司ります。


経絡の流れ

  • 起点: 足の親指の外側端(大敦:LR1)
  • 流れ
    → 足の甲 → 内くるぶしの前 → すね内側 → 膝内側 → 太もも内側 →
    → 鼠径部 → 下腹部 → 胸 → のど → 目の周囲へ
  • 分枝:
    肝・胆・胃・肺に通じ、頂点では頭頂部(百会)に達する。


経穴(けいけつ)一覧(代表的なもの)

番号 経穴名 読み 主な位置 主な効能
LR1   大敦 だいとん 足の親指外側爪の端 月経不順・不眠・のぼせ
LR2 行間 こうかん 足の親指と人差指の間 怒り・のぼせ・目の充血
LR3 太衝 たいしょう 足の甲、第一・二中足骨の間 ストレス・頭痛・月経痛
LR5 蠡溝 れいこう すね内側上方5寸 陰部のかゆみ・情緒不安
LR8 曲泉 きょくせん 膝の内側のしわ 月経不順・膝痛
LR13 章門 しょうもん 第11肋骨の先端下 肝胆の調整・脇腹痛
LR14 期門 きもん 乳頭の下方、肋間部 胸脇痛・消化不良・ストレス


関連臓腑

  • 所属: 肝
  • 表裏関係: 足の少陽胆経
  • 五行: 木
  • 感情: 怒(いかり)
  • 季節: 春
  • 体の部位: 目・筋肉・爪・生殖器・胸脇


主な症状・異常

  • ストレス・イライラ・情緒不安
  • 偏頭痛・目の充血・視力低下
  • 胸脇部の張り・胃のつかえ・げっぷ
  • 月経痛・月経不順・PMS
  • のぼせ・顔の赤み・高血圧傾向
  • 足のつり・こむら返り・爪の異常(割れ・白濁など)


養生のポイント

  • 感情(特に怒り)をためずに発散する
  • 春は早寝早起き・軽い運動で「気の流れ」を良くする
  • 深呼吸・ストレッチ・散歩で「気滞」を防ぐ
  • 緑色の食材(春野菜・ハーブ)で肝をサポート
  • 十分な睡眠で肝血を養う


象徴的な経穴①:太衝(たいしょう)

  • 位置: 足の甲、第1・第2中足骨の間のくぼみ
  • 効能: ストレス・頭痛・月経痛・不眠
  • 特徴: 「気の流れを整える最高のツボ」
    感情の詰まりをほどき、体と心の緊張をゆるめる。


象徴的な経穴②:行間(こうかん)

  • 位置: 足の親指と人差し指の間、指の股のくぼみ
  • 効能: のぼせ・目の充血・イライラ
  • 特徴: 「肝火を鎮める」ツボ。怒りや熱の高ぶりを鎮静化する。


象徴的な経穴③:期門(きもん)

  • 位置: 第6肋間、乳頭の下方あたり
  • 効能: 胸脇の張り・胃もたれ・不安感
  • 特徴: 肝の“出口”であり、感情や気を解放するツボ。胸の閉塞感に効果的。


一言まとめ

「肝経」は“気と情緒の調律線”。
気血をめぐらせ、怒りやストレスを解き放ち、心身の流れを整える。
現代の「ストレス社会」で最も乱れやすい経脈。

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