督脈

概要

督脈は、身体の背面の正中線上を走行する経脈で、「陽脈の海(ようみゃくのうみ)」とも呼ばれます。
十二経脈のうち、六つの陽経(手足の陽経)を統べ、背骨・脊髄・脳など、生命活動を統率する中心的な経絡です。
精神面では「意志・集中・行動力」を司り、肉体面では「背骨・神経系・生殖機能」を支えます。


経絡の流れ

  • 起点: 会陰(えいん/肛門と性器の間)
  • 流れ
    → 尾骨 → 腰 → 背中の正中線上 → 頸部 → 頭頂 → 額 →
    → 鼻梁 → 上唇の中央(人中) → 上歯茎に終わる。
  • 分枝
    腎に入り、膀胱経・脳と連絡し、陰器の部にも枝を出す。


経穴(けいけつ)一覧(代表的なもの)

番号 経穴名 読み 主な位置 主な効能
GV1   長強 ちょうきょう 尾骨の先端下 痔・腰痛・泌尿器症状
GV3 腰陽関 ようようかん 腰の第4腰椎下 腰痛・坐骨神経痛
GV4 命門 めいもん 第2腰椎下 腎虚・冷え・精力低下
GV9 至陽 しよう 第7胸椎下 背中のこり・胸苦しさ
GV14 大椎 だいつい 頸の根元・第7頸椎下 風邪・発熱・自律神経
GV16 風府 ふうふ 後頭部のくぼみ中央 頭痛・めまい・精神不安
GV20 百会 ひゃくえ 頭頂部の中心 不眠・ストレス・高血圧
GV23 上星 じょうせい 髪の生え際から上1寸 鼻づまり・頭痛
GV26 水溝 すいこう 鼻下の溝中央 意識障害・失神・ショック
 

関連臓腑

  • 所属: 奇経八脈(十二正経とは別の“特別経絡”)
  • 主な支配領域: 脊柱・脳・中枢神経・生殖器
  • 五行的性質: 陽
  • 表裏関係: 任脈(陰の統率)


主な症状・異常

  • 腰痛・背中のこり・脊柱の硬直
  • 頭痛・めまい・のぼせ・耳鳴り
  • 不眠・うつ・集中力低下・精神不安
  • 冷え・精力減退・ホルモンバランスの乱れ
  • 発熱・免疫低下・疲労倦怠
  • 失神・意識障害(急救穴として水溝が使われる)


養生のポイント

  • 背骨をしなやかに保つ(ストレッチ・ヨガ・太極拳が◎)
  • 冷えを防ぎ、腰を温める(督脈=陽気の通り道)
  • 姿勢を正し、“気の柱”を通す
  • 朝日を浴びて体内時計と陽気を整える
  • 過労・性的消耗を避け、腎精を守る


象徴的な経穴①:命門(めいもん)

  • 位置: 第2腰椎棘突起の下(腰のほぼ中央)
  • 効能: 腎虚・冷え・精力減退・腰痛
  • 特徴: 「生命の門」—生命エネルギー(腎精)の源を温めるツボ。


象徴的な経穴②:大椎(だいつい)

  • 位置: 首の根元(第7頸椎の下)
  • 効能: 風邪・発熱・肩こり・免疫低下
  • 特徴: 「陽気の十字路」—全身の陽経が交わる要穴で、発熱時の調整や免疫力アップに効果的。


象徴的な経穴③:百会(ひゃくえ)

  • 位置: 頭頂部の中央(両耳を結ぶ線と正中線の交点)
  • 効能: 不眠・ストレス・めまい・自律神経失調
  • 特徴: 「全身の気の集まる場所」。
    心身のバランスを整え、精神を安定させる。


一言まとめ

「督脈」は“陽の大黒柱”。
背骨を通って全身の陽気をめぐらせ、意志力・活力・精神の安定を支える経脈。
まっすぐな背中と温かな腰こそ、督脈が通った証。

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