手の太陰肺経

概要

手の太陰肺経は、肺の気を司る経絡で、呼吸・皮毛・免疫・気の循環に深く関わります。
人体における「気の出入り口(呼吸・鼻)」と「外界との境界(皮膚)」をつなぎ、外邪(風邪など)から身体を守るバリア的な働きを担います。


経絡の流れ

  • 経絡の起点: 中焦(胃のあたり)
  • 流れ
    中焦  →  下って大腸を絡う  →  上って肺に属す  →
    → 気管・喉を通って鎖骨下へ出る  →  肩の前方(中府) →
    → 上腕の内側 → 前腕の橈側(親指側) →  手首(太淵) →
    → 母指(親指)の爪の外側へ至る(少商)
  • 絡経: 分枝が手首から外れ、人差し指の橈側を走り、手の陽明大腸経(商陽)に連絡


経絡の流注(経穴一覧)

番号 経穴名 読み 主な位置 主な効能
LU1   中府 ちゅうふ 鎖骨の下、前胸部 咳・喘息・胸のつかえ
LU2 雲門 うんもん 鎖骨外端下のくぼみ 胸痛・肩の前側の痛み
LU3 天府 てんぷ 上腕前面、腋下から3寸 咳・憂うつ・喉の渇き
LU4 侠白 きょうはく 上腕前内側、腋から4寸 胸痛・上肢のだるさ
LU5 尺沢 しゃくたく 肘窩の外側 咳・痰・発熱・肘関節痛
LU6 孔最 こうさい 前腕の中間よりやや上 急な咳・喉の痛み
LU7 列缺 れっけつ 手首の親指側、出っ張りの下 風邪・頭痛・首のこり
LU8 経渠 けいきょ 手首関節の親指側 咳・喘息
LU9 太淵 たいえん 手首のしわ上、動脈の上 呼吸器・心臓の不調・脈診点
LU10 魚際 ぎょさい 親指の付け根 のどの痛み・発熱
LU11 少商 しょうしょう 親指の爪の外側 のどの腫れ・意識消失


関連臓腑

  • 所属: 肺
  • 表裏関係: 手の陽明大腸経
  • 五行: 金
  • 感情: 悲・憂
  • 季節: 秋
  • 体の部位: 皮毛・鼻・喉・気道


主な症状・異常

  • 咳、喘息、息切れ、胸のつかえ
  • のどの痛み、鼻づまり、感冒(風邪)
  • 肩・腕の前面の痛み
  • 皮膚の乾燥・汗の異常(多汗・無汗)
  • 感情的には「悲しみ」「ため息が多い」など


養生のポイント

  • 深呼吸を意識し、「吐く」息を長くする
  • 肺を潤す食材:白ごま、梨、大根、れんこん、はちみつ など
  • 乾燥や冷えを避け、首元・胸元を温める
  • 秋は特に「呼吸・潤い・悲しみ」を意識して整える

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