手の少陽三焦経

概要

三焦(さんしょう)とは、上・中・下の3つのエリアを指します。

区分 主な部位 主な働き
上焦(じょうしょう) 心・肺 呼吸・血液循環(気の上昇)
中焦(ちゅうしょう) 脾・胃 消化・吸収(気の変換)
下焦(げしょう) 腎・膀胱・小腸 排泄・生殖・水分代謝(気の下降)

この三焦をつなぐのが三焦経であり、身体の気・血・水の流れを調整する総監督のような経脈です。
また、耳・側頭部・肩・腕などを通るため、頭痛・耳鳴り・肩こり・眼精疲労にも密接に関わります。


経絡の流れ

  • 起点: 薬指の外側端(関衝:TE1)
  • 流れ
    → 手の甲 → 手首 → 前腕外側中央 → 肘 → 上腕 → 
    → 肩後方 → 首 → 耳の周囲 → 眉の外側へ
  • 分枝
    胸中に下り、心包に連なり、三焦(上・中・下)に広がる。


経穴(けいけつ)一覧(代表的なもの)

番号 経穴名 読み 主な位置 主な効能
TE1   関衝 かんしょう 薬指外側爪の端 発熱・耳鳴り・頭痛
TE2 液門 えきもん 薬指と小指の間の水かき のどの痛み・目の充血
TE3 中渚 ちゅうしょ 手の甲、薬指と小指の間 耳鳴り・頭痛・肩こり
TE4 陽池 ようち 手首の背側中央 手首痛・消化不良・浮腫
TE5 外関 がいかん 手首上2寸、骨の間 風邪・頭痛・肩こり・発熱
TE6 支溝 しこう 手首上3寸 便秘・胸脇の張り
TE10 天井 てんせい 肘の上、上腕後側 肘痛・リンパの腫れ
TE14 肩髎 けんりょう 肩峰の後下方 肩こり・腕の挙上障害
TE17 翳風 えいふう 耳の後ろのくぼみ 耳鳴り・難聴・顎関節症
TE20 角孫 かくそん 耳の上の生え際 偏頭痛・耳鳴り
TE21 耳門 じもん 耳前のくぼみ 耳鳴り・難聴・顎痛
TE23 糸竹空 しちくくう 眉の外端 目の疲れ・頭痛


関連臓腑

  • 所属: 三焦
  • 表裏関係: 手の厥陰心包経
  • 五行: 火
  • 感情: 喜(よろこび)
  • 季節: 夏
  • 体の部位: 耳・側頭部・肩・腕外側・目


主な症状・異常

  • 偏頭痛・こめかみの痛み・耳鳴り・難聴
  • 肩こり・腕の外側の痛み
  • 咽喉の炎症・扁桃炎
  • 便秘・胸脇の張り・わき腹痛
  • むくみ・発熱・口の渇き
  • イライラ・自律神経の乱れ


養生のポイント

  • ストレスや感情の詰まりを解消する(胸脇部の伸展が大切)
  • 十分な水分をとり、水分循環を整える
  • 長時間のデスクワークで「肩・首」を固めない
  • 耳のマッサージ・首のストレッチを習慣に
  • 熱がこもりやすい人は苦味野菜や柑橘類で熱を冷ます


象徴的な経穴①:外関(がいかん)

  • 位置: 手首のしわから上2寸、腕の外側中央
  • 効能: 風邪・頭痛・発熱・肩こり・自律神経調整
  • 特徴: 「外邪(風・寒・熱)」を防ぐ要穴。八脈交会穴で、全身の気のバランスを整える。


象徴的な経穴②:翳風(えいふう)

  • 位置: 耳の後ろのくぼみ(乳様突起の下)
  • 効能: 耳鳴り・難聴・顎関節症・顔面神経痛
  • 特徴: 耳と顎、頭部の循環を改善するツボ。耳症状には欠かせない。


象徴的な経穴③:中渚(ちゅうしょ)

  • 位置: 手の甲、薬指と小指の間のくぼみ
  • 効能: 偏頭痛・肩こり・イライラ・耳鳴り
  • 特徴: 「気滞(きたい)」を解消し、感情の詰まりを開く。


一言まとめ

「三焦経」は“全身の交通路”。
気・水・熱の流れを司り、耳・肩・頭・心のバランスを取る経脈。
偏頭痛・耳鳴り・ストレス性の詰まりに働く“気の調整線”。

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