手の太陽小腸経

概要

手の太陽小腸経は、小腸に属し、胃や脾で消化された飲食物をさらに精(栄養)濁(不要物)に分ける働きを持ちます。
つまり、「清濁の分別(せいだくのぶんべつ)」をつかさどり、身体の栄養吸収・排泄機能の調整に関係します。
また、経絡は肩・頸・耳・目を通るため、五感器(感覚系)や上半身の緊張にも関わります。


経絡の流れ

  • 起点: 小指の外側端(少沢:SI1)
  • 流れ
    → 手の外側 → 手首 → 肘 → 上腕後側 → 肩の後ろ →
    → 肩甲骨 → 首の後ろ → 頬 → 耳の前・後 →
    → 目の外側(瞳子髎)へ至る。
  • 絡経
    肩のあたりから分かれ、鎖骨下を通って心に入り、
    → 横隔膜を通り、胃を経て小腸に属す。


経穴(けいけつ)一覧

番号 経穴名 読み 主な位置 主な効能
SI1   少沢 しょうたく 小指外側端 高熱・乳腺炎・意識障害
SI2 前谷 ぜんこく 小指の付け根 耳鳴り・喉の痛み
SI3 後渓 こうけい 小指の付け根後方 頸・肩・背中のこり・頭痛
SI4 腕骨 わんこつ 手首の外側 手首痛・黄疸
SI5 陽谷 ようこく 手首外側のくぼみ 耳鳴り・手首痛
SI6 養老 ようろう 手首の背側、骨の突起下 目の疲れ・老眼・肩痛
SI7 支正 しせい 前腕後側中央 首こり・神経痛
SI8 小海 しょうかい 肘の内側後方のくぼみ 肘痛・頭痛・癇癪
SI9 肩貞 けんてい 肩の後下方 肩関節痛
SI10 臑兪 じゅゆ 肩甲棘上端のくぼみ 肩のこり・上肢の運動障害
SI11 天宗 てんそう 肩甲骨中央部 肩背痛・呼吸苦
SI12 秉風 へいふう 肩甲棘上窩 肩こり・肩甲間部の痛み
SI13 曲垣 きょくえん 肩甲骨内側上角 肩甲骨痛
SI14 肩外兪 けんがいゆ 背中、肩甲骨内側 肩・頸のこり
SI15 肩中兪 けんちゅうゆ 背中上部 背痛・首の強ばり
SI16 天窓 てんそう 首の側面 咽喉痛・耳鳴り
SI17 天容 てんよう 下顎角の後下方 顎痛・耳鳴り・咽頭炎
SI18 顴髎 けんりょう 頬骨の下 顔面神経痛・歯痛
SI19 聴宮 ちょうきゅう 耳前のくぼみ 耳鳴り・難聴・顎関節症


関連臓腑

  • 所属: 小腸
  • 表裏関係: 手の少陰心経
  • 五行: 火
  • 感情: 喜(過度な興奮)
  • 季節: 夏
  • 体の部位: 耳・目・咽喉・肩・上肢後側


主な症状・異常

  • 肩こり・首こり・肩甲骨痛・腕のしびれ
  • 顎関節症・歯痛・耳鳴り・難聴
  • 喉の痛み・扁桃炎
  • 顔面神経麻痺・三叉神経痛
  • 小腸の機能低下(下痢・腹痛・尿量異常)
 

養生のポイント

  • 心経と連動して「心身の過熱」を防ぐことが大切
  • 焦り・不安・興奮などの“火の気”を鎮める
  • 肩・首を温め、血流を良くする
  • 暑い季節は十分な水分と睡眠をとる
  • 苦味食材(緑茶・ピーマン・ゴーヤ)で心火を冷ます


象徴的な経穴:後渓(こうけい)

  • 位置: 小指の付け根の後方、手のひら側のくぼみ
  • 効能: 頸・肩・背中のこり、頭痛、ストレス、不眠
  • 特徴: 督脈を開く「八脈交会穴」で、背骨全体・中枢神経系に作用する。
    → 精神的緊張や自律神経の乱れにも効果的。


象徴的なもう一穴:天宗(てんそう)

  • 位置: 肩甲骨の中央のくぼみ
  • 効能: 肩背部痛・肩甲骨の内側のコリ・呼吸困難
    → 深い呼吸を促し、心の緊張をほぐす。


一言まとめ

「小腸経」は“心の熱を外へ導く道”。
肩こりや耳鳴りだけでなく、心身のストレスや緊張を逃がす経脈。
熱を冷まし、気の流れを背面から整える。

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