散結止痛とは

■ 概念

散結止痛とは、体内に形成された結塊(けっかい)・癥積・痞塞・気滞・痰核・瘀血塊などの 「結(つまった状態)」を散らし、痛みを鎮める治法です。
結とは、気・血・痰・湿・食積などが停滞し塊状になった状態で、胸脇痛、腹痛、固定痛、しこり、腫れ、圧痛などを伴います。
本治法は、停滞物質を除き通利を回復し、痛みを根本から改善することを目的とします。


■ 対象となる証・病態

  • 気滞による膨満・胸脇や腹部の張った痛み
  • 瘀血停滞による刺すような固定痛
  • 痰湿停滞によるしこり・結節・腫れ
  • 食積・寒凝による腹痛・胸痞
  • 慢性・周期性・固定性の痛みを伴う疾患

■ 適応症状

  • 胸脇部の張り痛み・脹痛
  • 腹痛・脘腹痞満・牽引痛
  • 乳房結節・咽中異物感・甲状腺腫
  • 生理痛(瘀血・気滞型)
  • 筋結節・慢性炎症・触れるしこり・慢性疼痛

■ 使用される代表的な薬物

  • 牡丹皮(ぼたんぴ)・川芎・当帰(瘀血散結)
  • 枳実・香附子・青皮・木香(理気散結)
  • 海藻・昆布・半夏・玄参(痰核散結)
  • 延胡索・乳香・没薬(止痛活血)
  • 瓜蔞仁・厚朴・陳皮(痰湿・食積の結解)

■ 代表的な方剤

  • 逍遥散(しょうようさん):気滞・情志不調による胸脇痞満・痛みに。
  • 瓜蔞枳実湯(かろうきじつとう):痰湿・胸膈痞塞に。
  • 血府逐瘀湯(けっぷちくおとう):瘀血停滞による刺痛・固定痛に。
  • 温胆湯(うんたんとう):痰湿・心下痞・精神不安感を伴う結滞に。
  • 二陳湯(にちんとう):痰湿頑固な結滞に応用。

■ 臨床応用のポイント

  • 痛みが固定性・慢性・押すと痛む場合は瘀血の関与が多い。
  • 情志(ストレス)由来の胸脇痛・梅核気には理気薬を重視する。
  • しこり・結節型では痰湿・瘀血・寒凝の鑑別が重要。
  • 急性痛には止痛薬、慢性痛には散結・化痰・活血を併用する。

■ まとめ

散結止痛は、体内の停滞(結)を解消することで疼痛を根本から改善する治法です。
気滞・痰湿・瘀血などの性質に応じて、理気・化痰・活血・軟堅・温通などを組み合わせることが重要です。
固定痛・慢性痛・結節性疾患・胸脇痛・腹痛などに広く応用します。

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