脈診 各論②:虚実・脈力

虚実・脈力の意義

脈診における虚実・脈力は、正気(気血・臓腑機能)の充実度と邪気の盛衰を判断する中核となる指標である。
浮沈・遅数によって病位と寒熱を定めた後、虚実・脈力を診ることで、治療の攻補方針が明確になる。


虚実の診かた

虚実は、脈の力強さ・張り・抵抗感を通して、正邪の力関係を総合的に判断する。


① 虚脈

軽く触れると感じるが、押すと弱くなり、力感に乏しい脈。

  • 示唆:正気不足
  • 主な病機:気虚、血虚、陰虚、陽虚
  • 臨床的特徴:疲労感、慢性経過
  • 関連治法:補気、補血、滋陰、温陽

② 実脈

強く触れても力が衰えず、抵抗感のある脈。

  • 示唆:邪気亢盛
  • 主な病機:外邪侵襲、痰湿、瘀血、食積
  • 臨床的特徴:急性・活動性病変
  • 関連治法:祛邪、瀉法

脈力の診かた

脈力とは、脈の強弱・持続性・反発力を指し、虚実判断をより具体化する要素である。


① 脈力弱

脈の打ち方が弱く、持続性に乏しい。

  • 主な病機:気虚、陽虚
  • 関連治法:補気、温陽

② 脈力強

脈の打ち方が力強く、押し返す感触がある。

  • 主な病機:実熱、痰湿、瘀血
  • 関連治法:清熱、祛邪、活血

虚実と脈力の組み合わせ

虚実と脈力を組み合わせることで、証の性質と治療方針がより明確になる。

  • 虚脈+脈力弱:正気虚(補法中心)
  • 実脈+脈力強:邪気実(瀉法中心)
  • 虚実錯雑:本虚標実(補瀉併用)

舌診との照合

虚実・脈力は、舌質の色・形と照合することで理解が深まる
例えば、虚脈+淡白舌・痩薄舌であれば気血虚、実脈+紫暗舌であれば瘀血実証が示唆される。


臨床での注意点

虚実判断は主観に左右されやすいため、左右差・全体像・経時変化を重視する。
また、高齢者や慢性疾患では虚証が基調となることが多く、過度な瀉法を避ける配慮が必要である。


病機・治法との関係

虚実・脈力は、治法の攻補配分を決定する核心的要素である。
病位・寒熱を踏まえた上で虚実を定めることで、治療方針は立体的に確立される。

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