脈診 各論①:浮沈・遅数(病位・寒熱)

浮沈・遅数の意義

脈診における浮沈・遅数は、病位(表・裏)と寒熱という診断の最も基本的な二大軸を示す重要な所見である。
これらは他の脈象を解釈する前提条件となり、証の大枠を決定づける


浮沈(病位)

浮沈は、脈が皮膚表層で触れやすいか、深く沈んでいるかを診て、病邪の所在(表か裏か)を判断する。


① 浮脈

軽く触れただけで明確に感じられ、強く押すと弱くなる脈。

  • 示唆:表証、外感病初期
  • 主な病機:風寒・風熱の侵襲
  • 関連治法:解表、疏風

② 沈脈

強く押して初めて明確に感じられる脈。

  • 示唆:裏証、内傷病
  • 主な病機:臓腑病変、内寒・内熱
  • 関連治法:温裏、清裏

遅数(寒熱)

遅数は、脈拍数を基準として、体内の寒熱状態を判断する。


① 遅脈

一呼一吸あたりの拍動数が少ない脈。

  • 示唆:寒証
  • 主な病機:陽気不足、寒邪内盛
  • 関連治法:温陽、散寒

② 数脈

一呼一吸あたりの拍動数が多い脈。

  • 示唆:熱証
  • 主な病機:実熱、虚熱
  • 関連治法:清熱、滋陰

浮沈と遅数の組み合わせ

浮沈と遅数を組み合わせることで、病位と寒熱を同時に把握できる。

  • 浮+数:表熱証(風熱)
  • 浮+遅:表寒証(風寒)
  • 沈+数:裏熱証
  • 沈+遅:裏寒証

舌診との照合

浮沈・遅数は、舌診と照合することで診断の確度が高まる
例えば、浮数脈+舌尖紅・薄黄苔であれば表熱証、沈遅脈+淡白舌・白苔であれば裏寒証が示唆される。


臨床での読み方の注意点

脈拍数は年齢・体質・精神状態の影響を受けるため、絶対数ではなく相対的判断が重要である。
また、浮沈・遅数は単独で結論を出すのではなく、虚実・脈力・性状脈と併せて総合判断する。


病機・治法との関係

浮沈・遅数は、治法選択の方向性を即座に決める指標である。
まず病位と寒熱を定めた上で、次に虚実や病性を加味することで、治療方針が明確になる。

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