浮沈・遅数の意義
脈診における浮沈・遅数は、病位(表・裏)と寒熱という診断の最も基本的な二大軸を示す重要な所見である。
これらは他の脈象を解釈する前提条件となり、証の大枠を決定づける。
浮沈(病位)
浮沈は、脈が皮膚表層で触れやすいか、深く沈んでいるかを診て、病邪の所在(表か裏か)を判断する。
① 浮脈
軽く触れただけで明確に感じられ、強く押すと弱くなる脈。
- 示唆:表証、外感病初期
- 主な病機:風寒・風熱の侵襲
- 関連治法:解表、疏風
② 沈脈
強く押して初めて明確に感じられる脈。
- 示唆:裏証、内傷病
- 主な病機:臓腑病変、内寒・内熱
- 関連治法:温裏、清裏
遅数(寒熱)
遅数は、脈拍数を基準として、体内の寒熱状態を判断する。
① 遅脈
一呼一吸あたりの拍動数が少ない脈。
- 示唆:寒証
- 主な病機:陽気不足、寒邪内盛
- 関連治法:温陽、散寒
② 数脈
一呼一吸あたりの拍動数が多い脈。
- 示唆:熱証
- 主な病機:実熱、虚熱
- 関連治法:清熱、滋陰
浮沈と遅数の組み合わせ
浮沈と遅数を組み合わせることで、病位と寒熱を同時に把握できる。
- 浮+数:表熱証(風熱)
- 浮+遅:表寒証(風寒)
- 沈+数:裏熱証
- 沈+遅:裏寒証
舌診との照合
浮沈・遅数は、舌診と照合することで診断の確度が高まる。
例えば、浮数脈+舌尖紅・薄黄苔であれば表熱証、沈遅脈+淡白舌・白苔であれば裏寒証が示唆される。
臨床での読み方の注意点
脈拍数は年齢・体質・精神状態の影響を受けるため、絶対数ではなく相対的判断が重要である。
また、浮沈・遅数は単独で結論を出すのではなく、虚実・脈力・性状脈と併せて総合判断する。
病機・治法との関係
浮沈・遅数は、治法選択の方向性を即座に決める指標である。
まず病位と寒熱を定めた上で、次に虚実や病性を加味することで、治療方針が明確になる。
0 件のコメント:
コメントを投稿