脈診 総論

脈診とは

脈診(みゃくしん)とは、橈骨動脈に触れて脈の状態を診察し、気血の充実度、臓腑機能、病邪の性質や病位を判断する診断法である。
舌診と並び、東洋医学における内部状態を直接反映する重要な診察法として位置づけられる。


脈診の特徴と意義

脈は全身の気血運行の結果であり、瞬間的・動的な身体反応を捉えやすい。
舌診が比較的「静的・体質的」情報を示すのに対し、脈診は現在進行形の病勢や正邪の拮抗状態を反映しやすい。


脈診で何を診ているか

脈診では、単に速さや強さだけでなく、深さ・大きさ・張り・滑らかさなど複数の要素を総合的に判断する。

  • 病位:表か裏か
  • 寒熱:冷えか熱か
  • 虚実:正気不足か邪気亢盛か
  • 病性:痰・湿・瘀血・気滞など

脈診の基本的な診断軸


① 浮沈(病位)

脈が皮膚表層で触れやすいか、深く沈んでいるかを診る。

  • 浮脈:表証、外感病初期
  • 沈脈:裏証、内傷病

② 遅数(寒熱)

一呼一吸あたりの拍動数を目安に、寒熱を判断する。

  • 遅脈:寒証
  • 数脈:熱証

③ 虚実(正邪)

脈の力強さや抵抗感から、正気と邪気の関係を診る。

  • 虚脈:正気不足(気血虚)
  • 実脈:邪気亢盛

④ 脈の性状(質感)

脈の触感や形状は、病邪の性質を反映する。

  • 弦脈:肝気鬱結、痛み、緊張
  • 滑脈:痰湿、食積
  • 渋脈:瘀血、津液不足
  • 緊脈:寒凝、疼痛

六部定位と臓腑の関係

脈診では、左右の手首それぞれに寸・関・尺の三部があり、各部位が特定の臓腑と対応すると考えられている。

  • 左寸:心
  • 左関:肝
  • 左尺:腎(陰)
  • 右寸:肺
  • 右関:脾
  • 右尺:腎(陽)

脈診を行う際の注意点

脈診は環境や心理状態の影響を受けやすいため、安静時に、左右差や全体像を重視して診ることが重要である。
また、単一の脈象に固執せず、舌診・問診・症状と総合して判断する姿勢が求められる。


脈診と病機・治法との関係

脈診は、病機の確定や治法選択、治療効果の判定に直結する。
例えば、弦脈が緩和し滑脈が消失するなどの変化は、疏肝・化痰などの治法が奏功している指標となる。

本ブログでは今後、代表的な脈象を各論として整理し、舌診との総合判断を通じて、診断から治療までの思考過程を体系的に示していく。

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