舌診 各論③:潤燥・動態・局所所見

潤燥・動態・局所所見の意義

舌診における潤燥・動態・局所所見は、舌質や舌苔だけでは把握しにくい津液の状態、気血の動き、臓腑ごとの偏りを補足的に示す重要な情報である。
これらの所見は比較的変化しやすく、急性変化・病勢の動揺・精神状態の影響を反映しやすい。


潤燥(舌の潤い)

舌の潤いは、津液の充足度と熱の影響を判断する指標である。

① 潤

舌面に自然な光沢があり、乾燥感のない状態。

  • 示唆:津液充足、胃気尚存
  • 臨床的意義:回復期・軽証に多い

② 乾燥

舌面が乾き、光沢が乏しい状態。

  • 主な病機:津液不足、熱傷
  • 関連治法:養陰、清熱、生津

③ 滑潤

過度に湿潤で、水分が多く見える状態。

  • 主な病機:陽虚、水湿内停
  • 関連治法:温陽、利水

舌の動態

舌の動きや安定性は、気血の運行状態や内風の有無を示す。

① 舌震え

舌を出した際に細かく震える状態。

  • 主な病機:気虚、血虚、内風
  • 臨床的意義:虚証に多い

② 舌強・舌硬

舌の動きが悪く、こわばった状態。

  • 主な病機:内風、痰熱閉阻
  • 注意:中風など重篤例を疑う

③ 舌偏

舌を出すと一側に偏る。

  • 主な病機:風痰、経絡阻滞
  • 注意:中枢・末梢障害の可能性

局所所見

舌の部位ごとの変化は、特定の臓腑の熱・虚・鬱を反映する。

① 舌尖紅

舌の先端が赤くなる。

  • 関連臓腑:心、肺
  • 主な病機:心火、上焦熱
  • 関連治法:清心瀉火

② 舌辺紅

舌の側縁が赤くなる。

  • 関連臓腑:肝、胆
  • 主な病機:肝火、肝鬱化火
  • 関連治法:清肝瀉火、疏肝

③ 舌中裂

舌の中央部に裂紋がみられる。

  • 関連臓腑:脾、胃
  • 主な病機:胃陰虚、津液損傷

④ 舌下静脈怒張

舌裏の静脈が怒張する。

  • 主な病機:瘀血
  • 関連治法:活血化瘀

舌診を総合的に読む視点

潤燥・動態・局所所見は、舌質・舌苔と組み合わせて読むことで診断精度が高まる
例えば、紅舌・少苔・乾燥・舌尖紅がそろえば心陰虚火旺が示唆される。


病機・治法とのつながり

これらの補助所見は、治法の微調整や経過観察において重要である。
本ブログでは、各病機・証における舌診所見を統合し、臨床的思考過程を明示していく。

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