五脈(ごみゃく)とは、五臓の気血の状態が脈象として現れたときの代表的な五つの基本的脈状を、五行に対応させて整理した概念です。
東洋医学では、脈は単なる心拍のリズムではなく、臓腑・気血・陰陽・生命活動の総合的な反映と考えられており、五脈はその中でも臓の性質が最も純粋に表れた脈の特徴を示します。
■五脈の基本概念
脈診では多くの脈象が分類されますが、その中でも五脈は、
- 五臓の本来の生理的性質
- 気血の基本的な動き方
- 生命活動の根本的リズム
を象徴する「根源的な脈の型」とされています。
つまり五脈とは、「五臓の生命活動が脈の形として現れた基本的パターン」を意味します。
■五脈と五行の対応
| 五行 | 五臓 | 五脈 | 脈の特徴 |
|---|---|---|---|
| 木 | 肝 | 弦脈 | 張りがあり弓の弦のよう |
| 火 | 心 | 鈎脈 | 流れが滑らかでやや盛り上がる |
| 土 | 脾 | 代脈 | 穏やかで規則的 |
| 金 | 肺 | 毛脈 | 軽く浮き柔らかい |
| 水 | 腎 | 石脈 | 沈んで硬く力強い |
■各五脈の東洋医学的な意味
①弦脈 — 張りの脈(肝)
弦脈は、弓の弦のようにピンと張った感触を持ちます。
象徴する性質
- 伸びやかな気の流れ
- 緊張と収縮
- 疏泄の働き
これは肝の「条達・伸展」という性質をそのまま表しています。
異常時の意味
- 気滞
- 痛み
- 肝陽上亢
弦脈は「気が張り詰めた状態」を象徴します。
②鈎脈 — 盛んな脈(心)
鈎脈は滑らかで、やや盛り上がるような流れを持つ脈です。
象徴する性質
- 血の充実
- 循環の旺盛さ
- 生命活動の活発さ
これは心の「血脈を主る」働きを反映します。
異常時の意味
- 心火亢進
- 熱証
- 血熱
鈎脈は「生命活動の盛り上がり」を示します。
③代脈 — 調和の脈(脾)
代脈は穏やかで規則的なリズムを持つ脈です。
象徴する性質
- 安定した気血生成
- 中正平和
- 調和
これは脾の「中焦の安定性」を反映します。
異常時の意味
- 気血不足
- 脾虚
- 中気不足
代脈は「生命の安定した基盤」を象徴します。
④毛脈 — 軽やかな脈(肺)
毛脈は軽く浮き、柔らかく触れる脈です。
象徴する性質
- 軽清な気
- 体表との関係
- 呼吸の働き
これは肺の「宣発・粛降」を表します。
異常時の意味
- 外感病
- 肺気虚
- 表証
毛脈は「外界との接触の状態」を示します。
⑤石脈 — 深い脈(腎)
石脈は沈んで硬く、力強い感触を持ちます。
象徴する性質
- 生命の根の力
- 深部の安定
- 精の充実
これは腎の「蔵精・固本」を反映します。
異常時の意味
- 腎虚
- 寒証
- 重病の深部化
石脈は「生命の深さ」を象徴します。
■五脈の本質的な意味
五脈は単なる脈の形状分類ではありません。
東洋医学では、
- 脈は気血の流れそのもの
- 臓の性質が脈に現れる
- 生命活動のリズムを示す
と考えます。
つまり五脈とは、「五臓の生命リズムが脈として表れた姿」なのです。
■五行色体表における位置づけ
五脈は特に次の要素と密接に関連します。
- 五臓の機能状態
- 気血の充実度
- 病の深浅
そのため、脈診は東洋医学の診断において極めて重要な位置を占めます。
■まとめ
五脈とは、五臓の生命活動の性質が脈の形として現れた基本的な脈象である。
- 肝 → 弦脈(張り)
- 心 → 鈎脈(盛り)
- 脾 → 代脈(安定)
- 肺 → 毛脈(軽清)
- 腎 → 石脈(深固)
五脈は、「生命のリズムを触覚として感じ取るための核心理論」として位置づけられています。
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