はじめに
東洋医学では、感情は単なる心理現象ではなく、五臓の働きそのものの表現と考えられています。
怒り・喜び・思い・悲しみ・恐れ――
これらは外から来るものではなく、
五臓の気血の動きが
心の形として現れたもの
です。
本記事では、情志がどのような原理で五臓に割り振られているのかを、全体構造として整理します。
情志は「臓の気の動きの方向」を表している
五臓と情志の対応は、単なる暗記ではありません。
それぞれの情志は、その臓が持つ気の運動方向そのものです。
| 臓 | 気の動き | 情志 |
|---|---|---|
| 肝 | 上昇・発散 | 怒 |
| 心 | 拡散・外向 | 喜 |
| 脾 | 集中・停留 | 思 |
| 肺 | 収斂・下降 | 悲・憂 |
| 腎 | 深沈・保持 | 恐 |
⇒ 情志とは、気の動きが精神として現れたものなのです。
肝と怒:気が上昇しすぎると起こる
肝の本質は、
- 条達(のびやかに流す)
- 疏泄(詰まりを解く)
です。
この気が強く上昇すると、
- イライラ
- 怒り
- 衝動性
として現れます。
つまり怒りは、
肝の気が“動きすぎている状態”
なのです。
逆に肝が弱ると、
- 抑うつ
- 意欲低下
が起こります。
心と喜:気が外に開いた状態
心は、
- 血脈を巡らせ
- 神志を統括します。
心の気が円滑に働くと、
- 安心感
- 穏やかな喜び
が生まれます。
しかし過度になると、
- 興奮
- 多弁
- 不眠
となります。
喜とは、
心の気が外に拡散している状態
なのです。
脾と思:気が内に集まった状態
脾は、
- 消化吸収
- 集中保持
を担います。
この働きが精神に現れると、
- 考える
- 思い巡らす
という「思」の情志になります。
過剰になると、
- 思い悩み
- 気滞
- 食欲低下
が起こります。
思とは、
気が内側に集中し続けている状態
です。
肺と悲:気が収縮する動き
肺は、
- 粛降(下げる)
- 収斂(引き締める)
という性質を持ちます。
この動きが情志に現れると、
- 悲しみ
- 憂い
- 喪失感
となります。
悲とは、
気が内へ縮こまり、下へ落ちる動き
です。
腎と恐:気が深く沈む動き
腎は、
- 精を蔵す
- 根源を支える
臓です。
腎の気が不安定になると、
- 恐れ
- 不安
- 驚き
が生まれます。
恐とは、
気が深部へ沈み、支えを失う状態
なのです。
情志は「原因」であり「結果」でもある
重要なのは、
情志は
- 臓の失調の結果でもあり
- 臓を乱す原因にもなる
という双方向性です。
例えば:
- 怒り → 肝気上逆
- 思い悩み → 脾気損傷
- 恐怖 → 腎気下陥
⇒ 情志は、心の問題ではなく、気の循環の問題なのです。
五臓の情志はバランスで成り立つ
五臓が調和しているとき、
- 喜は穏やか
- 怒は適度
- 思は集中力
- 悲は共感
- 恐は慎重さ
となります。
つまり情志は本来、
人を守るための働き
です。
問題になるのは、どれか一つが偏ったときです。
まとめ
情志は五臓に割り振られているのではなく、
- 五臓の気の動きが
- 心の形として現れている
ものです。
怒・喜・思・悲・恐は、
それぞれ
- 上昇
- 拡散
- 集中
- 収縮
- 沈降
という気の方向性を示しています。
情志を読むとは、五臓の気の動きを読むことなのです。
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