腹診は現在の病邪の位置と性質を示し、舌診は体内環境の状態を、脈診は気血の動態を表す。
三診をクロスして読むことで、似た症状・似た腹証を、病機レベルで正確に鑑別することが可能となる。
ケース①:心下部の抵抗感を主訴とする2例
症例A
- 腹診:心下痞、軽度抵抗、拒按なし
- 舌診:淡紅舌、白膩苔
- 脈診:弦滑
鑑別:痰湿を伴う肝気鬱結(少陽〜中焦)
治法:理気化痰・和解少陽
症例B
- 腹診:心下硬、明確な抵抗
- 舌診:紅舌、黄膩苔
- 脈診:滑数
鑑別:痰熱結聚・胃腑実熱
治法:清熱化痰・消導
ケース②:臍傍圧痛を認める2例
症例A
- 腹診:左臍傍に限局圧痛、腹力中等
- 舌診:暗紅舌、瘀点あり
- 脈診:渋
鑑別:血瘀(実証寄り)
治法:活血化瘀
症例B
- 腹診:両側臍傍圧痛、腹力軟弱
- 舌診:淡暗舌
- 脈診:細渋
鑑別:本虚を伴う血瘀(本虚標実)
治法:補気養血+活血
ケース③:少腹部の緊張・違和感を訴える2例
症例A
- 腹診:少腹急結、拒按
- 舌診:暗紫舌
- 脈診:沈緊
鑑別:寒凝血瘀
治法:温経散寒・活血
症例B
- 腹診:少腹部緊張あるが軟
- 舌診:紅舌、少苔
- 脈診:細数
鑑別:陰虚内熱による虚性緊張
治法:滋陰清熱
腹診×舌脈クロス鑑別の要点
- 腹所見が似ていても、舌・脈で病性は大きく変わる
- 腹診は「どこに・何があるか」、舌脈は「なぜそうなったか」を補足する
- 三診一致したとき、病機判断の確度は最も高くなる
このクロス鑑別は、誤治を防ぎ、治療効果を最大化するための実践的思考法である。
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