はじめに
五臓の中で「脾」は、しばしば地味に扱われがちです。
しかし東洋医学では、脾は気・血・水・精すべての“起点”と位置づけられます。
本記事では、
- なぜ脾が中心ではなく「起点」なのか
- なぜ脾が乱れると全身症状に広がりやすいのか
を、五臓横断の視点から整理します。
脾は「後天の本」である
脾は古来より、後天の本と呼ばれてきました。
これは、
- 生まれ持った生命力(先天の精)を
- 日々の飲食から補い続ける
という役割を担っているためです。
⇒ 生きている限り、脾は一日も休まず働き続けます。
気・血・水・精は、まず脾で生まれる
気の起点としての脾
- 飲食物は、そのままでは生命エネルギーにならない
- 脾の運化によってはじめて「水穀の精微」となる
この精微が、肺の清気と結びつき、全身を巡る気の源になります。
血の起点としての脾
- 血は心が主るが、生むのは脾
- 脾が弱れば、血は不足しやすくなる
さらに脾は「統血」を担い、
血が脈外に漏れ出ないよう保持します。
⇒ 血の量と質、どちらにも脾は深く関与します。
水(津液)の起点としての脾
- 津液もまた、飲食物から生成される
- 脾が弱ると、水は“巡る前に滞る”
これが、
- 痰湿
- 浮腫
- 重だるさ
といった症状の背景になります。
精を補う臓としての脾
- 精は腎に蔵される
- しかし消耗は避けられない
その消耗分を、
脾が後天の精として補充します。
⇒ 脾が弱ると、回復力そのものが落ちます。
脾は「中央」に位置する臓
五行では、脾は土に属します。
土は、
- 四方をつなぎ
- 上下を受け止め
- 全体を安定させる
性質を持ちます。
脾はまさに、
- 肝の疏泄を受け止め
- 心の血脈を支え
- 肺の宣発を助け
- 腎の先天を養う
調整役の要です。
なぜ脾の乱れは全身に波及するのか
① 生成段階でつまずくから
どの要素も、まず「作れない」状態になります。
② 滞りが二次的に広がるから
脾虚 → 湿 → 気滞・血瘀
という連鎖が起こりやすくなります。
③ 他臓が“頑張りすぎる”から
- 肺は気を配れず
- 肝は流そうとして昂り
- 心は血を巡らせきれず
- 腎は精を削って補おうとする
結果として、慢性化・複雑化します。
脾を立て直すことの意味
脾を整えるとは、
- 何かを強くすることではなく
- 全身が回り出す土台を整えること
です。
そのため、
- 補脾は即効性より持続性
- 派手さより安定感
が重視されます。
まとめ
脾は、
- 気・血・水・精の起点であり
- 五臓をつなぐ中央であり
- 回復力の源泉
です。
脾が整えば、他の臓は「本来の役割」に戻りやすくなります。
五臓を読むとき、まず脾を見る——
それは、東洋医学の最も実践的な視点の一つです。
0 件のコメント:
コメントを投稿