肝火犯肺とは

肝火犯肺(かんかはんはい) とは、東洋医学における肝と肺の病理の一つで、肝火が盛んになり、それが上逆して肺を犯すことで起こる病態です。
肺は呼吸を主り、肝は疏泄を主るため、両者の不調が絡むと「咳嗽・胸痛・怒りっぽさ」などの症状が現れます。


原因

  • 精神的ストレスや情志の抑圧 → 肝気鬱結が進み火化
  • 辛い物・酒・脂っこい物の過食 → 内熱を助長
  • 長期の肝火亢進 → 上逆して肺を犯す
  • 喫煙や外邪の影響 → 肺気を損なうことで悪化

主な症状

  • 発作的な咳、痰に血が混じることがある
  • 胸痛や胸の灼熱感
  • 口渇、口苦
  • 顔が赤く、怒りっぽい
  • 頭痛、めまい、耳鳴り
  • 便秘、尿が濃く黄色い

舌・脈の所見

  • 舌:紅、苔は黄
  • 脈:弦数

関連する病理との関係

  • 肝火上炎 肝の火が上逆するが、肺への影響はまだ限定的。
  • 肺熱: 肺の火が中心で、咳や痰が主症状。肝火犯肺は情志症状を伴う。
  • 心肝火旺 肝火が心にも影響。肝火犯肺は呼吸器症状が主体。

養生と治療の考え方

  • ストレスを軽減し、怒りを溜め込まない
  • 清熱・疏肝・瀉肺を意識する
  • 清熱を助ける食材:きゅうり、セロリ、緑豆、梨
  • 潤肺を助ける食材:はちみつ、百合根、白きくらげ
  • 漢方例:瀉白散(しゃはくさん)竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)

まとめ

肝火犯肺とは、盛んになった肝火が上逆して肺を犯す病態で、咳嗽・胸痛・痰血などの呼吸器症状と、肝火による情志の不安定さが同時に現れます。
疏肝と清熱、さらに肺を潤すケアが養生と治療の中心となります。

0 件のコメント:

コメントを投稿