十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)

📘 基本情報

項目内容
方剤名十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)
出典《外科正宗》
分類清熱解毒消腫排膿剤
構成生薬 荊芥(けいがい)・防風(ぼうふう)・柴胡(さいこ)・川芎(せんきゅう)・桔梗(ききょう)・
茯苓(ぶくりょう)・甘草(かんぞう)・樸樕(ぼくそく)・生姜(しょうきょう)・荊芥(けいがい)
方名の由来 十味(10種の薬)で「毒を敗(やぶ)る」=
体表の毒(湿熱・風毒・瘡毒)を解消する方剤。


🧭 方意(効能と主治)

区分内容
効能清熱解毒消腫排膿祛風除湿
主治 化膿性皮膚疾患(できもの・湿疹・にきび・おできなど)。
皮膚の赤腫・熱感・疼痛を伴う皮疹。膿を持つものにも用いる。
急性・亜急性の皮膚炎で体表に熱感・腫脹を呈するもの。
病機 風湿熱の邪が皮膚表に鬱し、
経絡を阻滞して気血の運行を妨げ、
腫脹・紅斑・疼痛・膿形成を生じる。
十味敗毒湯は風・湿・熱を除き、解毒・排膿する。


💊 構成生薬と作用

生薬主な作用
荊芥発表・透疹。皮膚の風邪を解し、炎症を鎮める。
防風祛風解表・止痒。皮膚のかゆみ・炎症を除く。
柴胡疏肝解表・清熱。体表と内の熱を調和する。
川芎活血行気。瘀血を除き、炎症や疼痛を改善。
桔梗宣肺利咽・排膿。膿を排出しやすくする。
茯苓健脾滲湿。水湿を除き、皮膚の腫れを軽減。
樸樕清熱解毒・消腫止痒。膿腫や発赤を鎮める。
生姜解表散寒・和胃。薬効を調和し、発汗を促す。
甘草調和諸薬・緩和解毒。全体をまとめ、炎症を鎮める。


🌡 臨床的特徴

観点内容
症状の特徴 皮膚の赤み・腫れ・熱感・痛みを伴う化膿性皮疹。
おでき・吹き出物・湿疹・リンパ節炎など。
化膿が進行する前後に用いられる。
体質傾向 やや実証~中間証。
湿熱や風熱に傾きやすく、皮膚トラブルを起こしやすい体質。
脈証・舌象 脈:やや数・有力。
舌:紅、苔は黄または薄白。


🩺 現代医学的応用

  • 化膿性皮膚疾患(にきび、せつ、よう、蜂窩織炎、湿疹など)。
  • 皮膚炎、アトピー性皮膚炎の急性期。
  • リンパ節炎、丹毒、毛嚢炎、粉瘤の炎症など。
  • 免疫応答性皮膚炎・皮下膿瘍など。


⚖️ 類方・比較

方剤特徴・鑑別点
排膿散及湯化膿が明確で、膿を排出させる作用がより強い。
荊防敗毒散風湿熱の皮膚炎で、瘙痒を伴うものに用いる。十味敗毒湯に近い。
清上防風湯顔面のにきび・赤ら顔など、上焦の熱毒に用いる。


⚠️ 使用上の注意

  • 虚証・冷え性・乾燥肌傾向の者には不向き。
  • 慢性化して滲出が少なくなった場合は他剤に切り替える。
  • 体力が低下している場合は補剤との併用を検討する。


📖 メモ(臨床要点)

  • 「風湿熱による皮膚の腫脹・膿」に用いる代表方。
  • 化膿の初期~中期で、赤・腫・熱・痛がある時に最適。
  • 皮膚科領域で頻用される安全性の高い方剤。
  • 体表の「毒」を外に排出する力が強く、治癒促進に優れる。

0 件のコメント:

コメントを投稿