紫雲膏(しうんこう)

📘 基本情報

項目内容
方剤名紫雲膏(しうんこう)
出典華岡青洲の創方(『外科正宗』などに記載)
分類外用方・活血去瘀・生肌剤
剤形軟膏(油脂製剤)
構成生薬 当帰・紫根・胡麻油・蜜蝋(みつろう)
別名紫雲華、紫根膏とも呼ばれる。
保険適用製剤紫雲膏(ツムラ軟膏、クラシエ軟膏、他)


🧭 方意(効能と主治)

区分内容
効能活血去瘀生肌潤膚消炎鎮痛
主治 火傷(やけど)、凍傷、創傷、痔疾、潰瘍、皮膚炎、ひび・あかぎれなど。
特に、壊死や瘀血を伴う慢性潰瘍や外傷に適す。
病機 外傷や熱による「気血の滞り」と「陰血不足」から、皮膚が潤いを失い再生が遅れる状態。
当帰で血を補い潤いを与え、紫根で瘀血を去り皮膚再生を促す。
胡麻油と蜜蝋が軟膏基材となり、創面を保護・保湿する。


🌡 臨床的特徴

観点内容
適応部位 皮膚・粘膜の浅い損傷、潰瘍、乾燥部位。
特に火傷・褥瘡・肛門部潰瘍などに用いられる。
体質傾向 外傷・炎症後の皮膚修復力が弱いタイプ。
冷え性や血行不良により瘀血傾向がある人にも良い。
使用感 赤紫色の軟膏で、温性・芳香を有し、塗布部を潤し柔らかく保つ。


💊 構成生薬と作用

生薬主要作用
当帰(とうき)補血活血・潤肌作用。血行を促し、組織修復を助ける。
紫根(しこん)清熱解毒・活血・生肌。皮膚再生促進と抗炎症・抗菌作用を持つ。
胡麻油(ごまゆ)保湿・抗酸化作用。薬効成分を溶出し、創面を柔らかく保護。
蜜蝋(みつろう)軟膏の基材。保湿・抗菌・皮膚保護作用を持ち、膏剤に粘度と密着性を与える。


🩺 現代医学的な理解

  • 抗炎症・抗菌作用(紫根:シコニン成分)。
  • 肉芽形成促進・上皮再生促進(当帰・紫根)。
  • 保湿と創傷治癒促進作用(胡麻油・蜜蝋)。
  • 軽度の鎮痛作用。


💬 臨床応用例

  • 火傷(熱傷)・日焼け。
  • 凍傷・外傷・擦過傷。
  • 褥瘡(床ずれ)・潰瘍・痔疾。
  • 手荒れ・あかぎれ・ひび割れ。
  • 帝王切開・手術後の創傷治癒促進。
  • 乳頭亀裂・肛門裂創などの粘膜損傷。


⚖️ 類方・類似軟膏との比較

軟膏名特徴・鑑別点
中黄膏腫脹・熱感の強い化膿性疾患に用いる。熱性炎症に重点。
太乙膏火傷・潰瘍の初期で滲出が多い場合に適す。清熱解毒力が強い。
紫雲膏乾燥・瘀血性・治りにくい創傷に最適。保湿と生肌作用を重視。


⚠️ 使用上の注意

  • 化膿が強い・滲出液が多い場合は使用を避ける(湿潤しすぎる)。
  • 感染部位には清潔を保ち、適宜ガーゼ交換を行う。
  • 油脂基材のため、衣服やシーツに付着しやすい。
  • まれにアレルギー性皮膚炎を起こすことがある。


📖 メモ(臨床的要点)

  • 活血+生肌の基本軟膏。外科・皮膚科・肛門科で広く使用。
  • 乾燥した潰瘍や慢性創傷、火傷の治りを促進。
  • 瘢痕形成を防ぎ、皮膚を柔らかく保つ効果がある。
  • 紫根と当帰の配合は「血を補い、血を動かす」黄金比。
  • 華岡青洲が考案した、日本の伝統的名方の一つ。

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