生肌潤膚とは

概要

生肌潤膚(せいきじゅんぷ)とは、 損傷した皮膚や潰瘍の修復を促し、皮膚を潤して再生を助ける治法である。 「生肌」とは新しい皮膚を生じさせること、「潤膚」とは皮膚を滋潤して乾燥や痂皮の形成を防ぐことを意味する。 主として瘡瘍潰瘍・火傷・湿疹・慢性皮膚病・創傷後の皮膚修復などに用いられる。

この治法は、潰瘍が久しく癒えない・瘡瘍潰後の肉芽形成が遅い・乾燥して痂皮が厚いなどの状態に対して、 津液を養い、血行を促し、腐肉を去って新生を助けることを目的とする。 したがって、単に潤すだけでなく、清熱解毒・活血去腐・生肌収口を兼ねて行う場合が多い。



主な適応症状

  • 潰瘍・瘡瘍の潰後に肉芽が生じにくい
  • 火傷や外傷の創面が乾燥し、痂皮が厚く癒合が遅い
  • 皮膚の乾燥・落屑・掻痒感
  • 慢性皮膚炎・湿疹・鱗屑性病変
  • 潰瘍後の瘢痕形成不良・色素沈着
  • 舌質淡紅または暗・苔薄白・脈細

これらはいずれも、気血不足津液損傷・瘀血停滞・熱毒残留などにより、皮膚の再生が阻害された状態に属する。



主な病機

  • 気血両虚皮膚を滋養する気血が不足し、肉芽形成が遅れる。
  • 津傷血燥:熱邪・火傷・乾燥などで津液が損傷し、皮膚が乾裂する。
  • 瘀血阻滞創口周囲の血行が悪く、腐肉が除かれず新生が妨げられる。
  • 熱毒未清:潰瘍に熱毒が残留し、肉芽が汚濁して癒合しにくい。

したがって、生肌潤膚法は清熱活血養血潤燥解毒などを併用して施すことが多い。



主な配合法

  • 生肌潤膚+清熱解毒潰瘍面が紅腫・滲出し、熱感のある場合(例:黄連解毒湯+紫雲膏)。
  • 生肌潤膚+活血化瘀創面が暗赤色で新肉が出にくい場合(例:当帰・赤芍・乳香・没薬配合)。
  • 生肌潤膚+補気養血慢性潰瘍や瘡癰潰後で虚弱な場合(例:八珍湯・十全大補湯+紫雲膏)。
  • 生肌潤膚+潤燥止痒:乾燥性皮膚炎や鱗屑性湿疹(例:当帰飲子)。
  • 生肌潤膚+化腐生新:潰瘍に腐肉が残る場合(例:生肌散・黄柏・白芷)。


代表的な方剤・外用薬

  • 紫雲膏(しうんこう):潤膚生肌・活血止痛。火傷・凍傷・潰瘍・湿疹などに用いる代表外用薬。
  • 生肌散(せいきさん):去腐生新・清熱止痛。潰瘍や瘡瘍の膿が排出された後の修復期に使用。
  • 当帰飲子(とうきいんし):養血潤膚・祛風止痒。皮膚の乾燥・掻痒に適す。
  • 八珍湯(はっちんとう):補気養血・助生肌。慢性潰瘍・皮膚再生不良に応用。
  • 黄連解毒湯(おうれんげどくとう):清熱解毒・消炎。熱毒が皮膚に残る場合に併用。


臨床でのポイント

  • 生肌潤膚は潰瘍の排膿期が過ぎてから使用するのが原則。
  • 清熱解毒・去腐生新の段階を経たのちに生肌薬を用いると効果的。
  • 潤膚薬は乾燥や瘙痒に適し、湿滞のある場合は慎用する。
  • 慢性潰瘍・糖尿病性潰瘍などでは補気・活血・化瘀を兼ねるとよい。
  • 代表的外用薬として紫雲膏が臨床で最も広く応用される。


まとめ

生肌潤膚法は、 損傷した皮膚の再生を促し、潤いを与えて皮膚機能を回復させる治法である。 清熱・活血・補気・解毒などを兼ねることで、潰瘍・火傷・慢性皮膚炎などに応用される。 代表的処方は紫雲膏・生肌散・当帰飲子などであり、 治療の核心は「腐を去り、新を生じ、潤して癒す」ことにある。

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