概念
理腸（りちょう）とは、腸の機能を整え、腸気の昇降や津液の運行を調節する治法である。
腸は水穀を伝導し、排泄を司る臓腑であり、その働きが乱れると、下痢・便秘・腹満・疼痛などが生じる。
理腸法は、腸の運行を正常化し、通と滞、虚と実、冷と熱を調整して腸の調和を回復させることを目的とする。
所属
主に調中法および和腸法に属し、腸気不調・腸虚・腸実・腸熱・腸寒など、腸の失調全般に応用される。
効能
- 腸の気機を整え、伝導作用を正常化する。
- 便通を調整し、下痢・便秘を改善する。
- 腸内の湿・熱・寒を調整し、調和を回復する。
- 腸の蠕動を安定化し、腹満や腹痛を軽減する。
- 津液の代謝を調整し、腸内環境を整える。
主治
- 腸虚不調：便溏、腹鳴、食欲不振、疲れやすい。
- 腸実停滞：便秘、腹満、腹痛、食滞。
- 腸熱湿滞：下痢、粘便、肛門灼熱感。
- 腸寒冷滞：冷えによる腹痛、下痢、四肢冷感。
- 腸気不順：排便不調、腹鳴、張痛。
病機
飲食不節、外感寒熱、情志失調、または脾胃の虚弱などにより、腸気の昇降が乱れ、腸の伝導機能が障害される。
このために、下痢・便秘・腹痛・腹満などが生じる。
理腸法は、これらの病態に応じて、補虚・瀉実・温寒・清熱を兼ねながら腸の働きを調整する。
代表方剤
- 四神丸（しじんがん）：脾腎陽虚による早朝下痢。
- 真人養脏湯（しんじんようぞうとう）：慢性下痢、虚寒性腸疾患。
- 黄芩湯（おうごんとう）：腸熱下痢、炎症性腸症状。
- 葛根黄連黄芩湯（かっこんおうれんおうごんとう）：腸胃湿熱による下痢や腹痛。
- 厚朴三物湯（こうぼくさんもつとう）：腸気滞による腹満・便秘。
臨床応用
- 慢性腸炎、過敏性腸症候群。
- 潰瘍性大腸炎、下痢型・便秘型ともに応用。
- 食滞・腸内ガス・腹鳴などの腸気不順。
- 虚寒体質による下痢、または実熱便秘。
- 腸の蠕動異常や腸内環境の不調。
使用上の注意
- 病機の虚実寒熱を明確にし、それに応じた治法を組み合わせる。
- 虚寒型には温補を、実熱型には清熱を併用する。
- 慢性疾患には脾胃の強化を図り、再発を防ぐ。
- 急性症では一時的に清利・通腸を重視する。
まとめ
理腸法は、腸の機能と気機の流れを整え、便通や腹部症状を改善する治法である。
腸の虚実・寒熱に応じて、温補・清熱・調気・健脾などを組み合わせ、腸の調和を取り戻すことを目的とする。
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