概念
調和陰陽(ちょうわいんよう)とは、体内の陰陽の偏盛・偏衰・失調を是正し、陰陽の相互依存・相互制約・動的平衡を回復させる治法である。
陰陽は中医学における最も根本的な理論概念であり、臓腑・気血津液・機能活動・寒熱虚実のすべては陰陽の枠組みで把握される。
陰陽の失調は、病の発生・進行・変化の本質であり、調和陰陽はあらゆる治法の根底に流れる総論的治則とも位置づけられる。
病機との関係
陰陽失調には、主に以下のような病機が含まれる。
・陰虚陽亢(陰の不足により相対的に陽が亢進)
・陽虚陰盛(陽気不足による寒・水湿の停滞)
・陰陽両虚(陰液・陽気ともに消耗)
・陰盛格陽/陽盛格陰(陰陽の隔絶・反転)
これらはいずれも、陰陽の平衡が破綻した結果として生じ、寒熱錯雑・虚実錯綜・上下不交などの複雑な病態を呈する。
主な適応病証
調和陰陽は、以下のような病証に幅広く応用される。
・寒熱が入り混じる症状(悪寒と発熱、冷えとのぼせの併存)
・昼夜で症状が大きく変動する病態
・慢性疾患で虚実・寒熱が単純に割り切れない場合
・更年期障害、自律神経失調様症状、慢性疲労、体調不安定
・少陰病・厥陰病など、陰陽の転化・錯雑を伴う病期
治療原則・配穴配方の考え方
調和陰陽では、単純な補瀉や寒熱処理に偏らず、全体のバランスを見極めた微調整的治療が重視される。
・陰虚には滋陰を基本としつつ、過度な寒涼を避ける
・陽虚には温補を行うが、陰液の消耗を助長しないよう配慮する
・寒熱錯雑では、寒熱を分けて同時に調整する
鍼灸では、補瀉手技の使い分け、左右・上下・表裏の配穴バランスが特に重要となる。
代表的な方剤・治法例
病態に応じて、以下のような方剤・治法が用いられる。
・桂枝湯:営衛不和による陰陽失調の基本方
・黄連阿膠湯:心腎不交・陰虚陽亢
・真武湯:陽虚陰盛・水湿内停
・八味地黄丸:腎陰陽両虚
・柴胡桂枝湯:少陽と太陽の陰陽不和
関連する治法・概念
調和陰陽は、以下の治法・理論と密接に関連する。
・補陰・補陽
・清熱・温裏
・和解少陽
・扶正祛邪
・治未病
まとめ
調和陰陽は、特定の病証に限定される治法ではなく、中医学治療全体を貫く根幹的治則である。
陰陽の動的平衡を常に意識することで、複雑化・慢性化した現代的病態にも柔軟に対応することが可能となる。
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