大腸液虚とは

大腸液虚（だいちょうえききょ） とは、大腸を潤す津液が不足することで、腸管が乾燥して便が硬くなり、便秘を呈する病態です。
津液は腸を潤し便通を円滑にする役割を持ちますが、それが不足すると大便が乾燥・難排となり、排便困難・便秘が起こります。特に高齢者や慢性病後、体液の消耗が背景にあることが多いです。

原因

• 加齢： 老化により津液の生化が不足し、大腸が潤いを失う。
• 久病による陰液消耗： 慢性疾患や長期の熱病後に陰液が枯渇する。
• 飲食の不摂生： 辛辣・乾燥した食事の過多や水分不足により津液が損なわれる。
• 体質的な陰虚： もともと体が乾燥しやすい体質の人に多い。

主な症状

• 大便が乾燥して硬い、兎糞状便
• 排便困難、便秘
• 口や咽の乾燥
• めまい・動悸・皮膚乾燥を伴うこともある
• 高齢者では慢性便秘として現れやすい

舌・脈の所見

• 舌： 舌質は紅、苔少または無苔
• 脈： 細数

代表的な方剤

• 麻子仁丸（ましにんがん）： 津液不足による乾燥便秘に用いる代表方剤。
• 増液承気湯（ぞうえきじょうきとう）： 陰液不足が強く、便がきわめて硬く難排の場合に適する。
• 潤腸丸（じゅんちょうがん）： 老人性便秘や慢性便秘に広く用いられる。

養生の考え方

• 十分な水分をこまめに摂る
• ごま、蜂蜜、梨、百合根、山薬などの潤腸作用のある食材を取り入れる
• 辛辣・乾燥・油っこい食事を避ける
• 軽い運動で腸の蠕動を助ける
• 規則的な排便習慣を身につける

まとめ

大腸液虚とは、大腸を潤す津液が不足して便が乾燥・難排となる病態であり、特に高齢者や慢性病後に多く見られます。
治療・養生の基本は「滋陰潤燥」「潤腸通便」であり、食生活や生活習慣を整えることが大切です。