肝陽化風(かんようかふう) とは、肝陰不足により肝陽が抑えられずに上亢し、その亢進した陽気が「風」を生じて内動する病態を指します。
主に中高年以降に多くみられ、高血圧・動脈硬化・脳血管疾患などに関連することがあり、めまい・頭痛・手足の震えやしびれ、重症例では突然の意識障害や半身不随などを引き起こすことがあります。
原因
- 肝陰不足: 加齢・慢性病・過労により肝陰が損耗し、肝陽を抑えられなくなる。
- 情志の失調: 怒り・ストレスが肝気を鬱結させ、それが火化して肝陽を助長する。
- 飲食・生活習慣: 長期の過食・飲酒・脂っこい食事が痰濁・瘀血を生じ、肝陽上亢に拍車をかける。
- 高血圧・動脈硬化: 現代医学でいう脳血管系の病態と関連が深い。
主な症状
- 頭痛、頭重、めまい
- 顔面紅潮、目の充血
- 耳鳴り、怒りっぽい、いらいら
- 手足の震え、しびれ、ふらつき
- 言語不利、口眼歪斜(脳卒中様症状)
- 重症例では突然の意識消失、半身不随
舌・脈の所見
- 舌: 舌質は紅、苔は少または黄、時に瘀斑あり
- 脈: 弦数
代表的な方剤
- 天麻鈎藤飲(てんまこうとういん): 肝陽上亢・肝風内動による頭痛・めまい・手足のしびれに用いる。
- 釣藤散(ちょうとうさん): 高血圧・頭痛・耳鳴りなど肝陽上亢の初期に適する。
- 鎮肝熄風湯(ちんかんそくふうとう): 肝腎陰虚が進んで肝陽化風を呈し、重度のめまいや振戦を伴うときに用いる。
養生の考え方
- 過度のストレス・怒りを避け、心を落ち着ける
- 塩分・脂肪の多い食事やアルコールを控える
- 適度な運動で血流を促すが、過労は避ける
- 睡眠を十分にとり、陰を養う
- 清肝・平肝作用のある食材(セロリ、菊花、クコの実など)を取り入れる
まとめ
肝陽化風とは、肝陰不足により肝陽が抑えられずに上亢し、その結果として内風が動いてめまい・振戦・しびれ・脳卒中様の症状を呈する病態です。
治療・養生の基本は「平肝潜陽」「滋陰熄風」であり、生活習慣の改善と精神安定が重要です。
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