胆火上擾(たんかじょうじょう) とは、胆の火が過剰となり上焦(頭部・心神)を擾乱することで、精神不安や不眠、焦燥感などを引き起こす病態を指します。
胆は「決断」を主り、心神と関わりが深いため、胆火が上擾すると精神の安定が損なわれ、心胆虚怯の傾向とあいまって不眠・多夢などが現れます。
原因
- 情志の失調: 長期のストレスや抑うつにより、肝胆の気機が鬱し火化する。
- 飲食の不摂生: 脂っこいものや辛いものの過食によって胆火を生じやすくなる。
- 体質的要因: 元来胆が虚している人は、火邪が擾乱しやすい。
主な症状
- 不眠、多夢、悪夢
- 驚きやすく、落ち着かない
- 心煩(胸が落ち着かずイライラする)
- 口苦(口の中が苦い)
- めまい、頭重感
- 耳鳴り
- 胸脇の張り
舌・脈の所見
- 舌: 舌質は紅、苔は黄膩
- 脈: 弦数
代表的な方剤
- 温胆湯(うんたんとう): 胆火上擾による不眠・不安・多夢を改善する代表方剤。
- 竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう): 肝胆火盛に用いられ、火熱を清泄する。
養生の考え方
- 規則正しい睡眠習慣を整える
- 精神的ストレスを軽減し、リラックスできる時間を持つ
- 辛辣・油っこい食事を控え、消化にやさしい食事を心がける
- 瞑想や深呼吸、軽い運動で心神を安定させる
まとめ
胆火上擾とは、胆の火が過剰となり心神を乱すことで、不眠や不安、口苦やめまいなどを引き起こす病態です。
治療・養生の基本は「清胆火」「安神和中」であり、生活習慣の調整と精神の安定を図ることが大切です。
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