概要
固脱救急(こだつきゅうきゅう)は、気血や陰陽が急激に外脱し、生命が危機に瀕する状態において、まずは外脱を固め止めて急場を救うことを目的とする治法である。亡陽・亡陰や大出血、大吐瀉、重篤な衰弱時など、救命を第一とする場面で用いられる。
主な適応症状
- 四肢厥冷、脈微欲絶、呼吸微弱
- 冷汗が滝のように出る
- 大量の吐瀉・出血後の顔面蒼白、意識朦朧
- 久病による気血両虚で突然の虚脱を呈する場合
主な病機
- 気血両虚や陽気暴脱により、衛外の固摂作用が失われる
- 出血・吐瀉・大汗などにより「気随液脱」となり、生命を支える精気が外へ漏れ出す
- 「本虚急脱」の病機であり、固摂・回陽・益気の三方面から急救を図る必要がある
主な配合法
- 固摂薬(龍骨、牡蛎、五味子、赤石脂):気や精を収斂し、外脱を止める。
- 益気薬(人参、黄耆):元気を補い、固摂の力を強める。
- 回陽薬(附子、乾姜、肉桂):必要に応じて加え、陽気を回復させる。
- 止汗・止瀉薬(浮小麦、糯稲根、芡実):外泄を防止。
代表的な方剤
- 参附湯:人参と附子で回陽固脱を兼ねる。
- 獨參湯:重篤な元気脱失の際に応用。
- 生脈散(人参・麦門冬・五味子):益気養陰と固脱を兼ね、吐瀉や大汗後の急脱に適す。
- 四逆加人参湯:陽虚欲脱に対応。
臨床でのポイント
- 「救急」の意味を持つため、発病が急で病情が危篤な場面に対応する。
- 固脱を基本にしつつ、病機に応じて「回陽」「益気」「養陰」を柔軟に配合する。
- 一時的に救命することを第一目的とし、回復期には本虚を補う治療に移行する。
まとめ
固脱救急は、気血・陰陽が急速に外脱している重篤な虚脱証に対し、収斂固脱を急務として救命を図る治法である。人参・附子・龍骨・五味子などを中心に用い、回陽や益気を兼ねて応急的に生命を支える重要な方法である。
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