胃腸寒湿とは

胃腸寒湿（いちょうかんしつ） とは、寒邪と湿邪が胃腸に停滞することで、消化吸収の働きが低下し、食欲不振・悪心・下痢・身体の重だるさなどが現れる病態を指します。
寒は収引・停滞の性質をもち、湿は重濁・粘滞するため、脾胃の「運化作用」が妨げられ、飲食物の消化吸収がうまくいかなくなります。

原因

• 冷飲食の過剰： 冷たい食べ物や飲み物の摂りすぎで胃腸が冷える。
• 外感寒湿： 雨や湿気の多い環境、寒冷地での生活により寒湿が体内に侵入する。
• 脾胃虚弱： もともと脾胃が弱い体質の人は、寒湿の影響を受けやすい。
• 長期の病後や過労： 脾胃の気が損なわれ、寒湿が停滞しやすくなる。

主な症状

• 食欲不振、食後の膨満感
• 悪心・嘔吐
• 軟便または下痢、水様便
• 腹部の冷え、胃腸の重苦しさ
• 口の中が淡白でさっぱりしない
• 全身のだるさ、手足の冷え
• 顔色が白っぽく、元気がない

舌・脈の所見

• 舌： 淡胖、苔は白膩
• 脈： 沈遅または濡緩

代表的な方剤

• 藿香正気散（かっこうしょうきさん）： 外感寒湿による悪心・下痢・嘔吐に用いる。
• 平胃散（へいいさん）： 脾胃に停滞する湿を取り除き、消化機能を回復させる。
• 理中湯（りちゅうとう）： 脾胃虚弱に寒が加わった場合に用いる。

養生の考え方

• 冷たい飲食を控え、温かいものを摂る
• 生ものや脂っこい食事を避ける
• 湿気の多い環境を避け、体を冷やさない
• 健脾化湿の食材（生姜、はと麦、陳皮、紫蘇など）を取り入れる
• 軽い運動で気血の巡りを促し、湿を散らす

まとめ

胃腸寒湿とは、寒と湿が胃腸に停滞して消化機能を妨げ、食欲不振・下痢・悪心・だるさなどを呈する病態です。
治療・養生の基本は「温中化湿」「健脾和胃」であり、冷えと湿気を避けて脾胃を温める生活が大切です。