小柴胡湯加桔梗石膏（しょうさいことうかききょうせっこう）

📘 基本情報

項目	内容
方剤名	小柴胡湯加桔梗石膏（しょうさいことうかききょうせっこう）
出典	《金匱要略》咽喉痹病篇（小柴胡湯を基礎とする加味方）
分類	和解少陽剤・清熱利咽剤
構成生薬	柴胡（さいこ）・黄芩（おうごん）・半夏（はんげ）・人参（にんじん）・ 甘草（かんぞう）・生姜（しょうきょう）・大棗（たいそう）・ 桔梗（ききょう）・石膏（せっこう）
方名の由来	小柴胡湯に桔梗と石膏を加えて、咽喉部の熱・腫脹・痛みを取るように工夫したもの。 少陽病の邪が咽喉に及ぶ場合に用いる。

🧭 方意（効能と主治）

区分	内容
効能	和解少陽・清熱利咽・解毒止痛。
主治	少陽病に咽喉の腫脹・疼痛・発赤を伴うもの。 のどの痛み・声のかすれ・発熱・倦怠感・食欲不振など。 急性咽頭炎・扁桃炎・気管支炎・上気道炎などに応用。
病機	外邪が半表半裏にあり、熱が咽喉に結して炎症・腫痛を起こす。 柴胡・黄芩で和解少陽し、桔梗・石膏で咽喉の熱と腫れを鎮める。

💊 構成生薬と作用

生薬	主な作用
柴胡	和解少陽・疏肝解鬱。半表半裏の邪を調和する主薬。
黄芩	清熱燥湿・解毒。柴胡と相配して少陽の熱を除く。
半夏	燥湿化痰・止嘔。痰や胃気上逆を改善。
人参	補気健脾。正気を扶けて回復を助ける。
甘草	調和諸薬・清熱解毒。咽喉の腫痛にも効果。
生姜	温中散寒・止嘔。胃気を整える。
大棗	補中益気・安中。全体を調和する。
桔梗	宣肺利咽・祛痰排膿。咽喉の腫痛を軽減する。
石膏	清熱瀉火・除煩止渇。咽喉や上焦の熱を鎮める。

🌡 臨床的特徴

観点	内容
症状の特徴	咽喉の痛み・腫れ・発赤、発熱、悪寒、頭痛、倦怠感。 声のかすれ、咳嗽、胸脇苦満、食欲低下などを伴う。 口苦・咽乾など少陽証の特徴を呈することが多い。
体質傾向	体力中等度〜やや虚。熱を帯びやすく、喉や上気道に炎症を起こしやすい。
脈証・舌象	脈：やや弦または数。 舌：紅、苔は薄黄またはやや乾燥。

🩺 現代医学的応用

• 急性咽頭炎・扁桃炎。
• 気管支炎・上気道炎。
• インフルエンザ・感冒の経過中で喉の痛みが強い場合。
• 慢性扁桃炎・声枯れ・咳嗽。
• 肝機能異常を伴う咽喉炎症。

⚖️ 類方・比較

方剤	特徴・鑑別点
小柴胡湯	喉の炎症が軽い場合。咽喉の強い腫痛がない。
桔梗湯	単純な咽喉痛・炎症に。半表半裏証を伴わない。
銀翹散	発熱・咽喉痛を伴う初期感冒に。表熱が中心。
柴胡清肝湯	慢性的な咽喉炎・口内炎など肝胆の熱を伴うものに。

⚠️ 使用上の注意

• 実熱が強く高熱・咽喉膿瘍がある場合は他方剤を選ぶ。
• 虚弱で冷えが強い場合は適応しない。
• 長期使用は胃腸への負担に注意。

📖 メモ（臨床要点）

• 「小柴胡湯」＋「桔梗石膏」で、少陽熱＋咽喉炎症を同時に治す方。
• のどの腫れや痛みが強く、寒熱往来や倦怠を伴うときに最適。
• 咽頭・扁桃の炎症が繰り返す人や、感冒後の咽痛に良い。
• 肝胆経の熱が上昇して咽喉に現れるタイプにも応用される。